ラブライブ!サンシャイン!! 3章

――ついに邂逅の時がやってきた。

 いつかこの時が来るとは思っていたが、意外にも早かった。
「りこ、今会いにゆくよ」
 年甲斐もなくこんな気色悪い発言が出来てしまうのはきっとりこに対する情熱が全身から迸っているからであろう。果たしてどんな女の子なのだろうか。
 しばらく視聴していると海岸の堤防に立つ一人の少女を見つけた。背を向けているためこちら側からは顔が確認出来ない。考え事をしているのか視線は遠くの海を見つめたままだ。
「りこ、君なのか……?」
 心臓の鼓動が徐々に高鳴ってくる。
 凝視していると唐突に彼女は海に向かって走り出した。
 偶然彼女を見つけた千歌は危ないと思って追い縋り抱きつくが、縺れてしまって二人とも海に落ちてしまった。
 彼女の御顔が見えたのはその時だった――
「ウオー! リコー! リコー!」
 僕はパソコンのモニターに食い入るように目を見開いた。断っておくが気が触れてしまったのではない。況してや某有名アイドルグループの某氏みたいに深夜の公園にて裸で友人の名前を連呼するような痴態も犯してはいない。ただ部屋の片隅で愛を叫んでいるキチガイなだけだ。
 さらに追加すると僕が好きなのは桜内梨子であって、間違ってもゼ○ギアスのリカルド・バンデラスのような屈強な男ではない。片仮名表記で書くと誤解を生むかもしれないからこれからは梨子と書こう。
 ともあれこうして梨子との運命の出会いを果たしたわけだ。
「漸く逢えたね、梨子」
 ふむ、背丈が高いから和服を着れば一層見栄えが良くなりそうな少女だ。髪も長くてストレートで美しい。綺麗な標準語を使い、その居住まいから日本古来より伝わる大和撫子の名を冠するに相応しい。
 
 浦の星女学院には「ピアノが引けなくなったから違う景色を見て再起する切っ掛けを掴めたら――」という理由で来たらしい。彼女はピアニストで作曲が出来るのだ。そこに目を付けたガイジオブガイジの千歌。本人は何度も「ごめんなさい」と拒否しているのに、しつこくスクールアイドルなってほしいと懇願しにくる。流石の僕もこれには腹が立った。
「やめなさい。梨子ちゃんが嫌がっているだろ!」
 淑女な梨子をこれ以上無理矢理引っ張ることはこの僕が許さない。
 そんなちっぽけな正義感など関係なく、梨子は千歌に籠絡されスクールアイドルにさせられてしまった……
 ピアノ一筋の道を歩めたかもしれないだけに複雑な気分だ。
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