世界は残酷で恐ろしいものかもしれないけれど、とても美しい

CARNIVAL 小説版 感想
舞台は7年後となる
小説版の主人公はゲーム本編にも少しだけ登場していた理紗の弟である九条洋一
姉が突然いなくなってしまった九条家は引っ越しをした
理紗は学と逃げている時点で"共犯"の扱いになっている

洋一はサオリという少女と出会う
訳ありの娘で家出をしてきたと言っている
神社の境内に住み着いていたサオリは生活費を体で稼いでいた
1回3000円という破格の値段で売春していることを聞いて洋一はサオリに忠告してあげた
サオリは今まで部屋の中に閉じ込められて生活していたらしく、世情に疎い
義父に育てられたサオリは常識的なことをあまり知らない
その義父もサオリが無知な事いいことに性欲処理として利用している
最悪の環境で生きてきたんだな、と思ったけれども話を聞く感じだとこの義父、そこまで外道でもないらしい
サオリを性欲対象としては見ているものの、それ以外の部分では非常に優しくサオリは全幅の信頼を置いているようだ
ある日、義父が部屋に鍵をかけ忘れたのを見計らってサオリは外出した
外の世界が見てみたかったというのもある
洋一はサオリの思考と義父の思考がいまいちわからなかったが今の状況はよろしくない
両親は家を開けていたのでサオリを実家に連れて行く
だがまだ若い洋一はサオリを養うだけの金も生活力もない
今後のことを考えるとサオリとずっとやっていくことは不可能だった
幾許かの金を持たせて別れる

行方の知らない姉からの電話が来たのもちょうどその時だった
洋一は前触れもない姉の電話に驚く
姉はとりあえず元気にしていると、だけ言って電話を切った
よもや姉から電話してくるとは思ってもみなかった
姉の安否が確認出来た事で洋一は7年を経て姉の本格的な捜索に足を踏み出す
かけてきた場所は引っ越しする前の古い家からである
母親がもし理紗が帰ってくるとしたらここだろう、と見込んで電力をそのままにして今の実家の電話番号を添えて電話機の隣においておいた
洋一が確認すると履歴があった
間違いなく姉はここに来ていた

洋一は姉と親しかった渡会泉と接触しようとした
渡会宅へ行くと泉の母親が出てきて、今は東京にいるという
数日後に1度帰省するのでその時会ってくれるらしい
泉も理紗の弟と話してみたいようだった

そんな折、サオリから緊急の電話が来る
誰かに追われているとのこと
洋一は真っ先にサオリと合流して追っ手から逃げようとする
しかしバッタリと出くわしてしまい、歯噛みする
やってきたのはクラスメイトの広田といかにもヤクザっぽい2人
洋一がサオリを勝手に神社から連れ出して行動を共にしているのが気に食わない様子
サオリには道徳的な事を教えてあげようと善行しようとした結果がこれである
広田達もサオリの体目当てのようで勝手に持って行かれたら困るという具合
屈強な男達に洋一が太刀打ち出来るはずもなく、ひたすら殴る蹴るの暴行を受ける
サオリだけは先に逃して自分が囮となる
やがてサオリが警察に通報したのか"救急車"がやってきた
110と119を間違えていた
でもこの場合、洋一の怪我の容態を鑑みると救急車で正解だったようだ
広田達は救急車のサイレンを警察車両のものと勘違いして逃げていった
病院で治療を受ける洋一
サオリをこのまま野放しにしておくとまた今回のような事態になるかもしれない
危惧した洋一はしばらくサオリと行動を共にすることにした

それからはサオリも連れて理紗についての手掛かりを探した
詠美の妹である麻里とも会った
麻里は犯罪者に荷担した理紗の弟ということで洋一を非難した
泉は洋一と気軽に話してくれた
洋一が知らない学生時代の理紗の事も詳しく話してくれた
学のことについても少し聞けた

サオリは自分の面倒を見てくれる洋一に好意を寄せていた
ところが洋一はサオリの好意を受け取る事が出来ない
洋一には特殊な性癖があって、生きている人間に興奮することは無いのだそうだ
死体にこそ洋一は価値を見出す
ある種の病気なのかもしれない
洋一は今まで誰にも話さなかったことをサオリに初めて話した
困惑したサオリはブツブツと何かを呟いている
翌朝起きてみるとサオリの姿は消えていた
わかっていたことだったけどやっぱり悲しかった

泉と連れ立って学の家に行く
学の祖母はまだ健在で泉が時折世話に来ている
学について祖母からも語ってもらえた
その後木村家の墓にいって黙禱を捧げた
自分の姉がしたことの罪をまざまざと見せつけられた洋一は胸が痛くなった
そして姉の罪業を知っていながらまだ姉の味方でありたいと思う自分に自己嫌悪を抱いていた
姉探しを打ち切ることを泉に報告すると泉は残念そうにした
家に帰ると芝生でサオリが紙袋を抱えて寝込んでいる
何があったのかと聞くと買い物をして帰って来たら家が閉まっていたから外で待っていたらしい
サオリが買って来たものを見るなり洋一は唖然とする
溢れんばかりの性欲解消グッズが紙袋の中に詰まっていた
あまりにサオリが嬉々としているので洋一は呆れてしまった
サオリは洋一とまぐわう事が出来ないのが嫌になって別れたのではなくてあくまで洋一のために何か出来ることはないか、それだけを考えて行動していた
洋一は自分の早とちりを呪い、早合点をしてしまったことを恥じた
サオリはどこまでも洋一一筋だったのである
洋一とずっと一緒にいるためにサオリは義父に断りを入れに家へ一旦戻ろうとする
勿論洋一は引き止めた
ここでサオリを行かせてしまえばもう二度と帰ってこないと思ったからだ
正直者のサオリが義父に好きな人が出来たから家を出るなどと言った義父はサオリを閉じ込めるに違いない
そんな展開しか予想出来ない
でもサオリは必ず戻ってくることを約束
サオリは行ってしまった

サオリが去ってから3週間が過ぎ、母が旅行から帰宅した
母親が古い家の電話履歴を洋一に見せる
洋一はそれを見て驚愕した
理紗がこの家に電話をしたのは確かだったがもう一件別の場所へ電話していることがわかったのだ
その電話番号にかけると男性が出た

7年ぶりの邂逅はあまりにも呆気ないものだった
随分と遠いところまで来たが理紗の居所はすぐにわかった
あの後、洋一は男性に場所を聞いてそこまで自分の足で行った
姉は魚屋でアルバイトをしていた
電話に出た男性はその店の店長だそうだ
姉は弟との再会にも別段驚いているふうでもなくあっけらかんとしていた
言いたいことは山ほどあるのに洋一は言葉に詰まっていた
理紗は現在の生活を話してその後、波乱に満ちた7年間を語ってくれた
楽しい話ではなかったが理紗が今までどうやって生きてきたのか興味あった

理紗と学は順風満帆な日々を送っていた
学の言うとおりにすればほとんどのことは乗り越える事が出来た
定住場所も見つけ、学は会社にも入社して収入も安定している
変化が訪れたのが今から8ヶ月前
会社で働いていた学は急に発狂してしまい倒れてしまった
それからは入院した学の代わりに理紗が働くようになった
洋一は理紗に案内してもらいついに学と対面する
第一印象は至って普通の男って感じだ
だが話しているうちに心のなかを見透かされているような気持ちになった
学は洋一が思っていることを的確に言い当て、洋一の望みまでわかっていた

洋一の願い、それは"再び姉と一緒に日々を過ごすこと"だった
学は少し難しいかもしれないけど洋一の願いを叶えると約束してくれた
実家に帰ってきた洋一は母に呼び止められる
フクヤマさんが待っているという
待ち人はサオリだった
福山佐織というのが本名らしい
サオリは有言実行してみせた
ちゃんと義父の了解を得て洋一のところへ戻ってきてくれたのだ
洋一をこんなにも大事に想っていてくれる娘が来てくれて母も喜んでくれた

病状が改善しつつある学に外泊許可が下りた
理紗と久しぶりの外食を楽しむ
平静を装っているつもりの学だが内心では己自身と戦っていた
学は理紗と過ごすために必死に自分を偽ってきた
学の病は常に幻覚が見えている状態だった
一般の人の感覚からすればそれは異常なのだが、学にとってはそれが日常の風景なのだ
学が生きることを否定する母親、その他怨霊みたく罵ってくる人達
幻覚と戦い続け学はこれまで生活してきた
感の良い理紗は学が快方に向かっているとは思っていなかった

病院に学の上司である男がやってくる
今までよくやってくれたので昇格させたいと言ってきた
学は辞退した
異常者である自分をここまで面倒見てくれたのだからこれ以上は甘えることは出来ない
学が働く事が出来たのは母と離婚した父のおかげだった
犯罪者であった学が就職するところなどありはしない
そんな折、父が自分の会社に学を引き入れてくれたのだ
今、目の前にいる上司が父親だった
父は母一人に学を背負わせてしまったことに責任を感じているのだろう
墓参りにも密かに行ってくれていた
学は少なからず父には感謝していた

精神がおかしくなってしまう前に学は理紗に伝えたいことをがむしゃらに書き綴る
意識が朦朧としてきて上手く文字を書けない
それでも出来る限りのことを書いたつもりだ
目の前が声のノイズで溢れ、最後に追伸を書いて病室を出た

それが木村学の最期であった

7年と1ヶ月に及ぶ木村学と九条理紗の逃避行は終わった
学は病院のトイレで首吊り自殺
理紗はその後、警察に出頭
洋一の望んだ形ではなかったが理紗は九条家に帰ってきた
理紗は学が亡くなったことにより放心状態でしばらく会話も出来なかった
母親とサオリが何度も面会に行くと徐々に回復してきて喋れるくらいには回復した
そして洋一に学の葬式に行って欲しいと頼んだ
姉の頼みを無碍にするわけにはいかないので洋一は木村家に向かった
葬儀にはほとんど人が訪れず、祖母、泉、泉の母親、洋一だけだった
途中で詠美と麻里が来てくれた
葬儀は滞り無く進み、学の火葬が始まった
骨壷に学の骨を収めて一式終了である

学の死体を間近に見て洋一は例の衝動が起こるかと思ったが大丈夫だった
それよりも学と理紗のこれまでを振り返ってみて、自分にとって大事な人が先に死んでしまうのは嫌だなと感じていた
学を失った時の理紗は見えるに耐えないほど辛そうだった
サオリが自分より先に逝ってしまったら堪えることは出来なさそうだ
しかしこれから待ち受ける人生に何が起こるかはわからない
明日死ぬことだって十分にあり得るのだ
回避出来ない死が突如訪れるかもしれない
そこでサオリは妙案を思いつく
もしサオリが洋一より先に死んでしまった場合、自分を死姦し愛して欲しいという
洋一はサオリが精一杯知恵を振り絞って出した答えを小馬鹿にし、この特殊な性癖を改善したいと思った
サオリの献身的な姿勢は洋一には眩しく輝いて見えた


END






小説版は死生観も描いているな、と感じた
本編に比べて小説の方が狂気度も高い
詳しく書けなかったんだが学が見ている光景はおぞましいものである
理紗と少しでも過ごすため、学はその狂気に耐えていたんだけど理紗も学の様子がおかしいことはすぐに分かってたんだよね
お互い感情の機微に敏感過ぎるのも時には障害となるんだなぁ
理紗が学の子を産みたいと言っていたのが何よりの証拠
理紗はなんとなく学の死期が近いことを悟っていたのだと思う
だからせめて学との子供が欲しかったんだろうね
まぁでも学はもう限界ギリギリのところで踏ん張っていたからそれも叶わなかった
学が精神病を患ってしまった理由とは?
完全に主観になるんだけど、まず母親を殺してしまったこと
これは7年経ってもずっと引き摺っていることだと思うし、学が死ぬまで永遠に業となり残り続ける
三沢を殺してしまったこともあるがどちらかと言えば母親の影響の方が大きいだろう
それと学の職業、恐らくこれも大きく関わっていると思う
小説を通して読んでみても学がどんな仕事をしているかは明確にされていない
でも父親の会話を読む感じだと正業にはとても思えないんだよな
俺の予想だと暗殺業かそれに関する仕事、とにかく人の命を奪う仕事の就いている可能性が高い
怨念じみたものが見えるのも殺した人達の恨みつらみなのでは?

物語の締め括りとしては本編に比べて圧倒的にこちらの方がいいです
学と理紗の今後の展開が一番知りたかった俺としては相応しいエンディングでした
学は死ぬしかなかったんだよ、これはもうこのシナリオから避けられない運命みたいなものだと思う
洋一の願いを叶えるっていう理由もあるけどそれだけじゃなく、学自身もいずれそうなるだろうと予感していたはず

学の死と上手く関連付けているのが洋一の性癖
生者には魅力を感じず、死者に魅力を感じる
死者は喋らないし、何も感じない、よって何をしてもいい
それが当たり前だと思っていた
世間ではこれを異常者と認定するのだが果たしてそうだろうか
生者に対して暴行をするのは嫌がられるだろうし、その構図こそが汚らわしく見える
逆に死者は苦痛すら受けない、何をされているのかも知ることはない

洋一には死者を敬う感覚が欠如していた
思考の転機になったのが学の死だったと思う
姉の理紗を散々引っ張り回した挙句、律儀に約束を守り死んでいった
本来憎むべき相手だったのに何故か形容出来ない気分になったはず
死は逃げだ、という考え方がある
学は洋一との約束事を守り死んでいった
結果だけを残し、洋一には何も語ることなく消え去った
洋一としてはもう一度学と会話したかっただろう
でも洋一は少なからず学の死で何らかの影響は受けたはずだよ
感化されたからこそサオリには先に死んで欲しくないと言ったんだし、本来性欲の対象にならない彼女を好きになったんだしね

やはり小説版は死について深く考察している作品だ

小説版と本編は密接にリンクしており正統な続編となっております
故に本編をやってから読むことを推奨
こちら単品だけで読んでも何のことやらさっぱりわかりませんw
CARNIVALをプレイした人に対するけじめのストーリーと言った感じの仕上がりです

最初のプロローグ2ページ(理紗に宛てた手紙の内容)は「やっぱり瀬戸口いいなぁ」と思ってしまうほど魅了される文章でした
プロローグが小説版の一番好きな部分です

ゲームと小説を合わせて完結するシナリオでした
続編を書いてくれたことを大いに感謝します
[ 2014/07/01 ]
小説 | TB(0) | CM(0)

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