戯画
2006年の作品
6年くらい前
略称は"こんにゃく"
kono aozora ni yakusoku wo
■シナリオ舞台は南栄生島
これと言って特色のある島ではなかったが15年ほど前、本土から出水川重工の進出で栄えるようになった
航空・宇宙事業で盛んな出水川重工の恩恵を受けて南栄生島は一気に開発が進み、一躍有名になる
しかしそれももはや過去の栄光
出水川重工の撤退により、島は一気に過疎化し今や人口は減る一方
学校も1学年1クラスが普通
これはそんな小さな島の高見塚学園に通う"つぐみ寮"の面々にスポットを当てたお話
海己>>静>凛奈>奈緒子>宮穂>沙衣里★海己航とは古くからの幼馴染の海己は誰かに依存しないと生きていけない性格
一人になるとどうしようもない不安に駆られて居ても立ってもいられなくなる
その依存先が昔から航だった
寮の面子にも心を許してはいるが真に信頼しているのはやはり昔からの付き合いが長い航
航の方も海己が引っ付いてくるのに対しては少年時代からただならぬ感情を抱いていたために、過去に二人は恋人同士になろうとしたことがあった
しかし海己と航は恋人同士になることはなかった
それどころか恋人になろうとしたことが海己と航は引き離され、3年ほど会えなくなった
海己と航の間には本人達の気持ちはともかく、海己の母親と航の父親のしでかしたことに問題があった
過去に辛く苦しい思い出があったのだとしてもお互いまだどこかで気持ちが燻っているのは明らかだった
航はやっぱり海己に対する気持ちを抑えることが出来ずもう一度恋人同士になろうとするが今度は海己の方から拒否されてしまう
"私達がくっつくとみんなバラバラになってしまうから"
その事をまだ鮮明に覚えていた海己
忘れたくても絶対に忘れられない過去
航は悔しくも変えられない事実に嘆く
海己の家族は現在、出水川重工の社員である父親と二人
航の家族構成は母親が白血病で亡くなり、家族と呼べるのは祖父と祖母のみ
そこで槍玉に挙げられるのが"海己の母親"と"航の父親"
そもそも星野家と羽山家は昔は友好的な関係を築いていた
何せ星野家と羽山家はお隣さんだった
お互い腫れ物を触るような状態になった理由
海己の母親と航の父親の駆け落ち
これが両家にとって絶縁にも近い影響を与えた
海己の家に遊びに来ていた航は海己の母親が出かけてくると行ったので海己と二人で海己の母親が帰ってくるまで待っていた
しかしその言葉を最後に海己の母親が戻ることはなかった
同時に自分の父親も忽然と姿を消していた
自分の息子の所業に対して呆れ果てる航の祖父、星野一誠は同時に海己の母親に対しても怒りを感じていた
さらに星野家は親族が多く、その大多数が羽山家を猛烈に批判した
海己は淫売の娘だと口汚く罵られた
そうなれば孫の代にまでそんなことを引きずることは断じてあってはならない
航と海己を引き離し、忌むべきものとして両家で"羽山""星野"の名を出さないことは暗黙の了解みたいなものになっていた
駆け落ちを機に海己と航の周りにあった温かい目はすべて冷たい目へと変わってとても居辛い環境となってしまう
海己は特にこの事を克明に覚えており、本当は航の事が好きなのに付かず離れずの距離を取っていた
何せ母親の駆け落ちは全てが崩壊した日
もし航と恋仲になってしまったらまた過去の二の舞になってしまうかもしれないから
海己が航の告白を拒み続ける理由はここにあった
もし恋人同士になってしまったら今度は今一緒に住んでいるつぐみ寮のみんなとの絆も壊れてしまうかもしれないから
『みんな』ならいい
『ひとりとひとり』の付き合いもいい
だが『ふたり』だけになってしまうのは駄目
なんとも難儀な思考である
それならば、と航は提案する
みんなに二人の交際について納得してもらった上でなら、と
心配そうにしながらも海己は承諾してくれたので航は早速実行する
揶揄しながらも"寮の"連中は認めてくれた
しかし本当の敵は寮の面子ではなく"世間体"
つまり海己と航が堂々と交際していることを知られても嫌な顔せず祝福してくれるだけの環境
海己はそこまでしないと不安で心が押しつぶされてしまうのだ
『みんな』と『ふたり』を両立させないと海己はどうしても航を拒絶する
真の戦いはここから
ここで航は一誠をアテにすることにした
かつて町議会委員で顔が広くて信頼性もある一誠が言を発すれば島の住民を得心させることも不可能ではない
誠意を見せるため今までずっと海己と寮で過ごしていたこと、とても友好的な関係を築いていたこと、恋仲になること
全てを暴露した
しかし一誠は反対した
どれだけ頼み込もうと海己との付き合いを認めようとはしない
いつも航の味方をしてくれるはずの祖母の奈津江も反対した
航は星野家のことを考えるばかりで頭がいっぱいになっていた
でも航が海己と付き合うことで発生する羽山家への影響をすっかり怠っていた
海己の父親は海己に似て気の弱そうな人
海己と航の事が世間に知れ渡ると一番非難、弾劾を受ける立場にある人
その過重に耐え切れなくなる可能性は非常に高い
それを踏まえた上で一誠と奈津江は反対していた
正論すぎる正論
もはや覆しようもない正論の殴打に為す術もなく沈む航
だがここまでお互いの気持が惹かれ合ってしまったのに無かったことにするのも無理
この焦れったくも絶望的な状況を打破するために航は文化祭を利用することにする
高見塚学園で行われる高見塚祭は島の名物的な祭典になっていて島のほぼ全員が参加するといってもいいほどのイベント
事前に寮のみんなと打ち合わせをしておいて出来るだけ多くの人を体育館に集める
航が最後に考えた作戦は学園祭を利用しての海己からのスピーチ
海己が今の自分の気持ちを観客全員に真摯に訴えることによって納得してもらおうというもの
海己は学園祭までに必死に練習してきた
今こそその力を発揮する時
このスピーチを聞かせるにあたって必須人物である海己の父親と航の祖父と祖母である三人も勧誘済み
そして海己のスピーチが始まった
弱々しい声ながらも自分の意志を決して曲げない心意気、健気ながらも相手への気遣いを忘れない言動に観客は呆気に取られ、「お前は衆人環視の場で何を言っているんだ」という沈黙の中、一番最初に拍手したのは星野一誠だった
それに連れて体育館中に拍手の嵐
航の作戦は見事に功を奏した
その後、一誠と海己の父親の克彦もお互いに少しずつではあるが歩み寄ることにした
これにて一件落着
この事態の有様に全く良い顔をしない星野の分家の人たちには航がしつこく説き伏せた
悲願は達成され航と海己は数年後、ついに結婚式まで漕ぎ着けた
END
★静土手にて黄昏れている少女を航が発見したのがちょうど一年前
何をするでもなくずーっと、ぼーっとしている、さらにほとんど動かず毎日同じ場所にいる
あまりに不自然に思った航は声を掛けてみるも全く喋らない
まるで感情が欠如しているかのような表情、朧気な瞳
どこの子なのかも全然わからない
探そうにも本人が無口なので手がかりがない
しかしそんな静も航が繰り返し懸命に語りかけることにより、極僅かずつではあるが喋るようになってきた
言語系に異常があるわけではなく、あまりにも人と接しなかったため自然と喋る必要がないと思っていたようだ
幸いな事に月日が経ってしまったが両親が判明した
子育てに事情があるのかもと判断した沙衣里と航は静をつぐみ寮に入寮させてはどうか、と相談を持ち掛ける
静の両親はいかにも面倒くさそうに何の疑問も抱かず至極あっさりと静を引き渡した
自分の娘だというのにあまりの放任っぷりに怒りが湧く
航はこの無気力な親の代わりに静の保護者になることを買って出る
静のつぐみ寮生活はこうして始まった
親が親だからか静は世間一般の常識を教わらなかったらしくて行動が自由奔放
それ故、男子の航が風呂に入っている時も平気で入ってきたりする
教師である沙衣里が一応一緒に入ることをやむを得ない状況に応じた条件を提示しているがほぼ無意味
そんな混浴生活を続けているうちに静の体に性の目覚めが起こる
次第に静の感覚はエスカレートしていき終いには航と体を合わせる羽目になってしまう
情事にまで至ったことを隠そうとする航だがいともあっさりと寒波されてしまい、寮のみんなから手厳しい非難を一手に受ける
保護者になって面倒を見るという枠から逸脱してしまったのがみんなの糾弾の理由
我が娘のように思っており、手を出すまいとはしていたがこうなってしまった以上、静を一人の女性として認識しちゃんと向き合うべきだと誓う
そんなある日、沙衣里に一本の電話が入る
それは静の両親からだった
なんとあのまるでダメ親の典型的な見本であった両親達が静と一緒に暮らしたいと言ってきたのだ
あんなのに任せられるか、と憤りを感じた航は実際に静の実家に向かうことにする
しかしその家庭形態を見るやいなや驚かされる
カップラーメンすら億劫そうに作っていた母親が手料理を作っている
さらに仕事帰りにどこをほっつき歩いているのか知らないが深夜以降にしか帰宅したことがない父親も静のためを思ってかいつ帰ってきてもいいように待ち構えていた
今までの生活とは別物になった静の家庭を見て、「今のこの両親になら静を任せてもいいかもしれない」と判断する
そして静に「お前、藤村の家に帰れ」と静に言ったがこれがまずかった
静にとってその一言は航と絶縁するに等しかった
両親から離れ航に救ってもらった静にとってはもはや両親なんぞどうでもよく嫌悪の対象にしかならない
作法や倫理一般をまともに知ったのもここつぐみ寮だからだ
自分の家から出ていけと言われているのも同然
静は自分の部屋に引き篭って他者との交信を絶った
航は静の部屋の前にどっかと腰を下ろし、さっきの言動は拙かったことを謝り、今一度話がしたいと懇願するも静は一向に出てこない
完全無視を決め込む気である
食事も取らずにずっと篭っているせいでそろそろ心配になってくる
静が取らないのであれば・・・、と自分も断食して静が出てくるのを辛抱強く待つ
だが静よりも航が先に風邪を引いてしまう
決して暖かくない時節に廊下で一人、さらに睡眠不足に食事抜きなら当然
航の異変を察知したのか少し慌てる様子が中から伝わってくるがそれでも静は出てこない
扉の向こうにいる航の様子が知りたい静は航ではなく奈緒子に電話で航の状態を聞く
奈緒子は誇張でも何でもなく、本当に航は風邪で辛そうだと静に伝える
「航が風邪を引いたのは意地張って出てこない静のせいだよ」と静に諭しながら
それでも頑ななに拒み続ける静についに奈緒子がブチ切れて静の部屋の前に立つ
いつまで生活力ゼロのままいるつもり?
いつまでも一緒にいられるわけじゃないんだよ?
航が静に藤村の家に帰れと言ったのは静のこれからの未来を案じてのこと
ずっと静を我が元に置いておきたい
それは航だけではなく寮の面々も同じ
だがいずれ別れは訪れる、その時に静が最低限の生活は出来ていないと心配で仕方がない
その時までに静が独り立ち出来るように、とこれは来たるべき日のための予行演習なんだよ、と航が言いたかったことを噛んで含めるように静に聞かせる
奈緒子が言い終わると他の面子も次々に静に励ましの言葉を掛ける
ありったけの愛情を込めた言葉をかけられた静はようやく観念して部屋から出てきた
少しの別れにはなるが一旦、静は藤村の実家に戻ることになる
時が経ち、静が寝ていた土手に航が昼寝をしていると少女がやってくる
理性と容姿を発展させたその風貌は間違いなく藤村静その人だった
航はあまりの変わり様に最初は戸惑ったが変わってない部分もちゃんと残っている静を見て心底嬉しく思った
END
★凛奈とある朝、航が目を覚ますと見知らぬ女子が自分の隣で寝ていた
こんな女子を拾った覚えなどさらさらなく、また誘ったのだとしたらどうやって連れ込んだのかどうかも皆目見当がつかない
しかしその誘われたご当人に言わせれば昨晩航と一緒にこの部屋に入ってくるまでの一部始終はしっかりと記憶に残っているらしく、逆に覚えていない航に対して信じられないといった具合
事を荒立てるのを嫌った一夜を共にした女子は足早に二階の窓から飛び降りて行った
その数日後、二人は呆気無く再開することになる
沢城凛奈と呼ばれたその少女は高見塚学園二年生のクラスに転校してきたのだ
なんとなく気まずくなりそうな雰囲気と思われるが凛奈のほうは知らぬ存ぜぬの一点張りで航を避けるようになる
担任の沙衣里も非常にやりにくい生徒が転入してきたみたいでおろおろしていた
まぁいわゆる沢城凛奈は校則違反を平気でしそうな問題児というレッテルを張られつつあった
さらに凛奈は家族との諍いがありつぐみ寮への入寮を決めていた
つぐみ寮では新しい入寮者が来るとその人のために入寮パーティを行うことにしていた
ぶっきらぼうで歓迎パーティなど何処吹く風という態度で興味も示さない
みんなが折角凛奈のために頑張ったというのにお構い無し
海己が凛奈を引き止めようとするが問答無用で素通りしていこうとする
だがここで航が凛奈に食いつく
凛奈はほっといてというオーラを全身からありありと出しているが航は刺々しい凛奈に臆することなく
「お前を絶対に引きずり込んでやる。俺達のことを、かけがえないのない仲間と信じられるまで洗脳の限りを尽くしてやるから、覚悟しとけよ!」
とまぁなんとも傲慢で図々しいことを言ってのける
凛奈は元より、寮生達も呆れてものが言えない状態になっていた
こうして航の凛奈を自分達の輪に入れるための壮大?な計画が始まった
とは言ったものの航がそう思い至ったのは凛奈が授業を遅刻した罰によるグラウンド10周をさせられているとき
普段の凛奈は無愛想極まりないのに走っている時の凛奈は美しいフォームで別人のように生き生きとしていたからだ
そして航はある一つの仮定をする
あいつは本当は純粋なヤツなのかもしれない
不良は不本意ながらやっているのかもしれない
もしくはそうせざるを得なくなった理由があるのかもしれない
そんなこんなで過ごしていると島のペンションである"サザンフィッシュ"で二人は鉢合わせになってしまう
経営者の三田村隆史を仲介しての激しい口論が突如始まった
事の顛末は凛奈が父親と離婚した本土にいる母親に愛想を尽かされため仕方なく父親が進んでる南栄生島に来たのはいいが、いざ父親の元を尋ねてみると自分の知らない女性と一緒にいたという
ショックを受けた凛奈はサザンフィッシュでヤケ酒を煽っていたところ偶然にも航がそこへ現れ、凛奈の話を聞くと「俺に任せろ!」的な事を言って凛奈と打ち解けてしまったという
そして二人してべろんべろんに酔ったところ、つぐみ寮に航がお持ち帰りした、という
航も事情をようやく飲み込んだ
だが結局航が"色々な意味"で何もしなかったことを凛奈はずっと不満に思っていた
この事に対して二人ともさんざん愚痴をぶつけ合った
隆史は目の前の二人をめちゃくちゃ仲がいいじゃねーか、みたいな目をして見ていた
とりあえず凛奈とまともに話せるようになったはいいが寮の面子の仲間になったわけではない
そこで勝負をすることに
日曜日に学園開催のマラソン大会があることがわかった
それで勝った方がお互いの言った命令を聞くというもの
航が勝ったらつぐみ寮の正式な面子に
凛奈が勝ったら寮を出ていくという単純なもの
そして日曜日
正式な結果だけを言うなら凛奈の独走ぶっちぎり一位
凛奈は前の学校では陸上部に所属していて長距離では一年生にも関わらず全国大会出場経験を持つ
かたや航はただの一般人
しかし前年度までは優勝し続けている
だが今回は教頭達の執拗な悪巧みの被害に遭い不眠不休の状態で参加する羽目に
これでは凛奈には及ぶわけがない
"正攻法では"
途中までは凛奈と並走していた航も体力に限界が来て地面にへたり込んでしまう
凛奈が見えなくなった辺りで航はただ"勝つ"というためだけに動く
コースを大きく外れて寮の裏手にある断崖絶壁から下に滑り降りるという命知らずなことをやってのける
崖を下ったところにちょうどゴールはある
凛奈が後少しでゴールというところで割り込むようにして乱入してきた航
ヘタっていたはずの航がどうしてここに・・・?という疑問を隠せない凛奈の横をダッシュで抜き去り見事一位を横取りする
当然失格扱い
唖然とする凛奈を見つつ航は図々しく勝ったと宣言する
航や事前に"勝った方が"としか言ってなかった
つまりどんな方法であろうが勝てばいいのだ
そのためなら航は躊躇なく反則技を使う
まさに試合に負けて勝負に勝つ
凛奈はあまりの航の大人気の無さに辟易としてしまった
だがどんな形であれ負けてしまったことは揺るぎない真実
仕方なく第二回目のパーティに参加
そこで凛奈は今までの態度を改め、つぐみ寮のみんなに謝罪をした
寛大な面子はそんなことを気にするはずもなく快く凛奈を受け入れた
つぐみ寮の正式な面子になった凛奈はそれまでとは打って変わって快活な少女へと変貌した
凛奈がこの島へ渡ってきた理由の一つに合わせ石の伝承があった
合わせ石というのは赤い鉱石を2つに割って男女が片方ずつ持つことによってどれだけ離れ離れになって容姿が変わったとしても必ず再会出来るというもの
そしてその石同士がきちんと結合すればそれが何よりの証明になる
凛奈はもう片方は誰が持っているのかずっと探し続けていた
航はそれから過去に凛奈と会っていたという夢を見る
もしかすると俺が持っているかもしれない、という憶測は俺が絶対に持っているはずだという確信に変わる
実家の物置を探していると亡き母親の化粧台から見事に合わせ石が出てきた
早速凛奈の持っている合わせ石とくっつけみる
だが合わなかった
形状が全然違っていた
それはつまり航は凛奈の思い出の人とは違ったわけで
航は希望的観測で凛奈が恋人だったら良いなぁ、と恣意的に脳内で記憶を作り変えていただけに過ぎなかった
それほどまでに凛奈に惹かれていた
だが折角の期待だけ持たせておいて石が結合しなかったのだから興醒めもいいところ
ちなみに凛奈が持っている合わせ石は隆史のものと一致することが判明した
折り悪くその時、凛奈は大会が迫っていて飛行機で本州に向かっていた
だが航が運命の人ではなかったことにショックを受けていた凛奈は心の病的な意味で体調が悪くなってしまう
一緒に着いて行った沙衣里に凛奈に取り次いでもらえるように頼み込む
ずっと引きずっている凛奈に航はたとえお前と過去に会っていなかったとしても今は好きだとストレートに言う
その言葉を聞いたら途端、現金にもほどがあるように恋煩いなんて一瞬で吹き飛んでしまったらしく大会ではぶっちぎりのトップの成績を収めてきた
南栄生島に着くなり即座に"走って"航がいる海岸まで来た凛奈
ぎょっとする航なんかお構い無しに抱きつく
電話越しでの好きでは物足りないらしくてお互い直接会って好きだと伝え合うことによって二人は様々な紆余曲折の果てに恋人同士になった
大会で優秀過ぎる成績を収めたのが目に止まったのか本国から凛奈をスカウトしにきた、という話を嬉々として食卓の場で話す沙衣里
しかし当の凛奈は苛立たしげ
もう大学進学が決定したようなものでしかも陸上に関しては有名な指導者に見てもらえるとのことで前途有望だと持て囃される凛奈
正直凛奈にとってそんな先の事は今はどうでも良かった
凛奈はみんなが思っているよりもこのつぐみ寮での居心地が良かったらしくいつまでも浸っていたかった
むしろもう少しで取り壊されてしまうつぐみ寮になんの感慨も湧いてないように見える自分以外の面子をおかしいと思うようになった
無論、他の面子がそんなことを思っていないはずなどなかった
みんな分かっているからあえて黙っていたのだ
せめてつぐみ寮が無くなるまで精一杯の楽しもうって
無くなった後に悲しい思い出ではなく良い思い出で心に残るようにって
言動に裏表のない凛奈はそれがどうしも表面に出てしまう
学園祭が迫っていた高見塚学園
今年の二年生は劇「ピーター・パン」をやることになっていた
ピーター役に抜擢されていた凛奈は今この時が一時の幸せであることがどうしても脳裏に浮かんでしまい、演技のキレが鈍ってしまう
そんなテンションのままついに開催を迎えてしまう高見塚祭
当日になっても意気消沈している凛奈をどうにかしようと航と海己は協力して凛奈を煽動させようとする
台本とは全く違う展開にしていき、尚且つ凛奈を奮い立たせる言葉を選んでいく
意外にも凛奈を復活させたのは海己だった
今が失くなってしまうのが嫌な凛奈、しかしいつかは絶対に訪れる離れ離れ
でも離れ離れになったとしても必ずみんなまたこの島に帰ってくるから、また7人で再会出来るから
と強く諭す
凛奈は海己が自分と同等かもしくは自分を凌ぐかもしれないぐらいに仲間のことを大切に想っていることを理解し海己の言った言葉に感銘を受けて同意した
文化祭が終わった後、凛奈は憑き物が落ちたような清々しい顔をしていた
凛奈が航を誘ってツーリングに行きたいという
今までお世話になった場所に礼を言いたいそうな
そして最後に向かった場所は凛奈と航がお互いに告白した海辺
このシチュエーションを待っていたかのように航は今度こそ本当に二人が離ればなれになっても繋がっている証として前々から注文しておいた合わせ石を凛奈に手渡す
それを見た凛奈はついに感涙し、やっぱり最後には航に感謝するのだった
幾年か経って凛奈は杉沢大学の期待の新人として国際試合でテレビに取り上げられるくらい雲の上の人になっていた
凛奈の試合を何年ぶりかに集まった面子でテレビに齧り付き鑑賞しつつ応援する
どうも凛奈の具合が優れなさそう
青い顔をしている
しかし前例があったようにこういうケースは大概航と喧嘩したとかそういう類のものだ
今回も例外ではなく案の定航と言い合いになってしまったらしい
スタート直前というところで腹痛に見舞われ、自身を喪失していく凛奈
控え室に戻り薬を飲もうとしているところで一本の電話
航からだった
どうやらこの会場に直接来ているらしい
びっくり仰天した凛奈は気分が悪いのも何のそのといった具合に航を探そうとするが見つかるはずもない
しかも航は明日の同窓会の幹事も任されているためここに居られる時間も多くない
3時に飛行機で飛び立つらしいのでそれまでにゴール出来たらゴールで会おうと言った
気分が悪かったのなんてまるで嘘のように元気をメラメラと取り戻した凛奈は航と必ずゴールで会うために闘志を燃やすのだった
END
★奈緒子まだ航が中学生3年の頃
今よりも遥かにマセていた航は当時高見塚学園1年生だった奈緒子に一目惚れしてナンパを仕掛ける
奈緒子はどうせ本気ではないと思って適当にあしらっていたのだがそれでもしつこく付き纏う航に困り果てていた
年上だというのに妙に馴れ馴れしく寄ってくる航を持て余していた
航の積極さに押されて奈緒子は航とデートまでするようになっていた
でも航は奈緒子を本当に好いているようだった
しかしそれは奈緒子からすればまだお遊びの域を出ていなかった
中途半端な態度で航と一緒に居たことに罰が当たったのかついにそれは白日の下に晒されてしまう
奈緒子には航ではなく同じ寮過ごしている本命の人がいた
辻崎博志という同学園の先輩だった
奈緒子がその人と喋っているときは明らかに浮かれているというか雰囲気がとても柔らかかった
航は二人のやり取りを見ているだけで奈緒子の心情をもう理解してしまった
自分は最初から奈緒子に求められてなどいなかったのだと
奈緒子も航に正直に気持ちを話して今まで出しに使っていたことを詫びた
それだけでは誠意が足りないと感じた奈緒子は航に体を以って謝罪してしまう
そしてこの件をきっかけに奈緒子は二人の間柄には5つのルールを設けた
厳格に決められたそのルールが航とは決して恋愛関係には陥らないということを如実に表していた
何しろ航も来年から高見塚学園に入学してくるわけだし、寮も一緒となると色々と発覚すると面倒なことになるからだ
しかし奈緒子は体を張ってまで贖罪に努めたものの結局、博志と結ばれることはなかった
それもそのはず、博志が奈緒子の事をただの後輩としか見ていなかったからだ
過去にこうしたとても苦い思い出があったにも拘わらず、航はやっぱり奈緒子の事を忘れられなかった
奈緒子は物言いこそ手厳しいものの、航の勉強などに付き合ってくれたりするのだ
他者には厳しく、自分が仲間と認めたものにはとことん甘く、それが奈緒子のモットーだった
そんな温情を受けていたらやっぱりあの時と同じように好意を抱いてしまうのも当然なわけで
昔と同じく奈緒子をデートに誘ってみることに
デート自体は別段変わったこともなく普通に終わった
但し、航のバイト代の使用権を全て奈緒子が行使して"航のためだけ"に使ったことを除けば
航としては奈緒子のために使いたかったのだが本人がそれを許さなかった
航にとってはもう一度奈緒子に挑む気概を持って臨んだデートのはずだった
でも肝心の奈緒子がどうにも本気だとは思っていないようだ
どことなくあの時と同じ雰囲気
相手にされてない+社交辞令じみた応対
奈緒子はどこまでも航を揶揄したような言葉を続ける
航はいい加減にしろとばかりに奈緒子を押さえつける
だが奈緒子は気後れした風でもなく悠然と航を見る・・・が次に航がしでかした行動には少し驚いたようだ
航はいきなり奈緒子にキスをした
それが自分が奈緒子に対して本気であるということを示すために
そうまでしても奈緒子はその行為は5つのルールに抵触していると言うだけ
今日も奈緒子は飄々しくやり過ごした
しかし航は手応えを感じていた
もしかすると今度こそは行けるかもしれないと
そう思えたのも束の間、最悪の展開が訪れる
夏休みということで大学のサークル連中がどかどかと隆史のペンションにやってきた
それだけならば問題は無かったのだが来た人間に問題があった
折悪しくその中に辻崎博志の姿があったのだ
不運が重なりその場に航と奈緒子もいた
博志を見た瞬間に奈緒子は驚愕の表情を浮かべ、航はなんとも気まずくなった
その日、奈緒子は博志と出かけたまま寮には戻らなかった
航は余計に不安になる
もしかしたらあの二人の恋は今になって成就してしまったのではないかと
二人の会話を側で聞いていない航にとっては推測の域を出ない
ともあれ奈緒子と博志が二人きりでいるのは確実
やはり奈緒子は自分にとって分不相応な相手だったのだろうか
でも奈緒子の内心は航が考えていたものとはまるっきり逆のものだった
奈緒子は航の事を本当に好きになろうとしているからこそ過去の自分の気持ちに決別しにきた
奈緒子が博志と会って話していた内容はいわゆるただの"のろけ話"
そう、自分がどれだけ航の事が好きかとか好きになった切欠とか、この前こんなことがあったとか等
それを元好きだった人に言い放ち続ける
奈緒子に好意など元々持っていなかった博志からしてみれば実にいい迷惑である
昔と違い現在の浅倉奈緒子という人間はここまで傲岸不遜になっていた
さらに次にはあろうことか次に出てきた言葉は悪役になってくれない?というとんでもないものだった
つまるところどこまでいっても航の視点から見れば「奈緒子はまだ博志に好意があるんじゃないか?」という疑問が常に頭から離れない
もしくはまた嘘を付いているのではないかという疑惑も残る
それは奈緒子が過去にしでかした手痛い過ちでもあるのだが、これを払拭するためには航の前で博志が奈緒子に対して暴言を吐いて忌み嫌う態度を取れば解決する
博志サイドから見れば『なんでてめーらの恋が成就するために俺が当て馬にされなきゃならねぇんだよw』という理不尽極まりない申し出だった
道理を蹴飛ばした無茶苦茶な言い分に呆れ果てる博志
だがかつて好きだった人にここまで頼むくらいに奈緒子は今は航にたいして尋常ではない感情を抱いているのも確か
それが確認出来たので博志はさっきから物陰に隠れ耳を澄まして注意深く二人の会話を聞いていた航を呼び出す
奈緒子は今の会話が聞かれていてギョッとする
実は航は隆史に一枚のメモを渡されていた
そこに行けば奈緒子と博志に会えると書いてあった
憎まれ役は御免だ、と博士は後は二人に任せてその場を後にした
二人の会話の内容をほとんど聞いていた航は奈緒子の真意が聞けて心底嬉しく思い、まさか聞かれているとは思ってもみなかった奈緒子は赤面した
こうして嘘偽りなく二人はお互いの気持ちを確かめ合った
そしてかつて決めた5つの誓約を自分達好みに改定し、ほぼ自分達の都合の良いものにしてしまった
奈緒子が卒業してから1年が経ち、奈緒子と同じ大学に行くために猛勉強した航は見事合格し、奈緒子が現在住んでいる場所に案内してもらって同棲生活を始めるのだった
しかも航と4年間一緒に過ごすためにちゃっかり必修科目をわざと落として留年する気満々の用意周到っぷりだった
END
★宮穂生前の祖父の事について非常に強い関心を持つ宮穂は航を誘って島の人達から情報を仕入れることにする
宮穂の祖父はイギリス人で名をウィリアム・エルガー
日本好きだったこともあり日本人として帰化する
日本名は六条紀一郎
祖父の事を愛している宮穂は無念にも祖父とは一度も会ったことがない
会ったことがない故にどんな人であったか興味津々
ある日、六条屋敷を捜索中に紀一郎の日記を発見する
早速中身を見てみるもまだウィリアム・エルガーとして名乗っていた頃の日記なので地道に翻訳しながら読み進めていく
内容は主に自分の妻である六条ミヤコに対する赤裸々な想いが綴られていた
紀一郎は相当奥手な性格だったらしくお互い相思相愛となんとなく気付いていても、自分の勘違いかもしれないとなかなか踏み出せずにいた
読んでいる側としてはとても焦れったい
宮穂は当時躊躇していた紀一郎に対して批判的な態度を取り、同じ男としてどう思うかを航に問いかけてみた
航は「ウダウダやっているうちに他の男にでも声を掛けられたらそれこそ元も子もない。気があると思ったら即座に求める」とハッキリした答え
宮穂も航のその意見には完全に同意――したのだが何か思うところがあったらしく急につれない態度になってしまう
後日、宮穂と航は二人で泪島に向かう
突然宮穂に「着いてからのお楽しみ」とだけ言われ無理矢理付き合わされる
泪島の裏手にある洞窟に二人で入るということになり、鈍臭い宮穂に手を貸して入ることにした
密かな隠れスポットであることを航に見せびらかしたかったのか意気揚々と奥に進んでいく宮穂
しかしどう見ても誰かが来た形跡がある
あろうことか食料品やその他諸々の生活用品がちらほらと置いてある
航に言わせればここはずっと前から子供達の遊び場や秘密基地になっていて昔から島に住んでいる人間からしたら知っているのは当然
宮穂にとってそれはムードが損なわれる残念な事実だったが、宮穂はそれよりも重要視すべき事柄があった
かつてここにミヤコと紀一郎は来たことがあるという
そしてミヤコはここで紀一郎に言われたある言葉の影響を受けて感動のあまり泣き出してしまった
さて紀一郎がミヤコに言ったその言葉とは?
宮穂はいきなり航にクイズを出す
さすがにここまで筋道立てて話しているので宮穂の問題の正解はすぐに想像出来た
宮穂は数十年前の祖父と祖母の間であった出来事を今ここで再現しようとしていた
航もその意図は汲み取っていたものの、宮穂とそういう関係になってしまっていいのかという一線があった
だけど、わざわざこんな手の込んでいて迂遠な方法を使う健気な宮穂が本気で自分の事を好いてくれている証拠でもある
宮穂のいじらしい気持ちを受け止め航と宮穂は付き合うことに
恋人同士になってからも紀一郎の足跡を辿る日々を怠ることはなかった
航は宮穂のために出来るだけ何でもいいから紀一郎の私物を集めようとした
そして集めた紀一郎の資料等は自由研究として高見塚祭で公開することにする
文化祭も滞り無く終わり、"宮穂の夏休み"が終わろうとしていた
宮穂と航の間には重大な食い違いがあった
航はこれからもずっとつぐみ寮がなくなるまでは宮穂と一緒にいるつもりだった
でも宮穂は宮穂の夏休みの終わりとともに本国に帰ることを決意していた
それは唐突に打ち明けたわけではなく、以前から宮穂は航にそういうことになっている事をそれとなく言葉尻に匂わせていた
ここでいう宮穂の夏休みとは文化祭終了時
本当は文字通りの意味である夏休みが終わると同時に本土に移動するはずだったけど宮穂がゴネて長引いてしまっていた
それもひとえに航を思ってのため
宮穂はもう航との行いを思い出にしようとしてしまっていた
航には心底それが気に食わなかった
勝手に自己完結されるのは納得がいかない
そんな宮穂は受け入れられない、ときっぱり突き放した態度を取る
宮穂は戸惑ってどうしたらいいか逡巡してしまう
この日を境に宮穂はつぐみ寮ではなく六条屋敷の方に引っ込んでしまう
航はその間に自分との戦いに励んでいた
六条紀一郎のまだ集まっていない資料を探し出して全て揃える
それが出来たら俺の勝ち、というどこまで行っても自己満足な提案を少し前にした
航が奔走している間にも寮のみんなは宮穂が引きこもっている屋敷に押し掛け執事の滝村を通じて宮穂に手料理などを贈っていた
そしてクリスマス
当初の予定より二ヶ月遅れで航は宮穂の屋敷を訪ねる
しかし二ヶ月も放ったらかしにしていた宮穂が激怒するのは当然の成り行き
相応の理由がなければ納得はしてはもらえないだろう
航は長い間ずっと紀一郎の資料を集め続けた
それでも最後の一枚だけがどうしても揃わなかった
自己満足に過ぎなかったそのことを宮穂に報告し、どうしても宮穂に戻ってきて欲しいという駄々を捏ねて宮穂の精一杯の想いを告げる
最初は憤懣遣る方無い態度をとっていた宮穂も段々と絆されて航の元へ戻ってくる
航は六条のしきたりと真っ向から対峙する事も厭わなかった
寮に戻った二人は意外なところで紀一郎の最後の文献を発見する
それは窓の補修に何の違和感もなく、あたかも風景の一部として溶け込むように使われていた
これにて六条紀一郎パーフェクトコレクションの完成である
宮穂が本州に戻ってからも間接的にしつこく宮穂の親族達と戦い続ける航
宮穂の親族達も最初は航と宮穂が結ばれるのに反対していたがあまりの執拗さについに滝村以外は全員折れてしまった
5年後
3日間だけの許しを得て南栄生島に帰還してきた宮穂は思い出の場所、つぐみ寮にて航と再会を果たす
END
★沙衣里高見塚学園の教職員である沙衣里は不穏な話を耳にする
学園長と教頭が二人してつぐみ寮を取り壊すための前倒し工作を密かに練っているらしい
5人を割った時点でつぐみ寮は廃寮が決まっていたのだが宮穂が入寮してギリギリ5人を維持し、さらには凛奈も今年になって入寮したことにより6人
寮生がどれだけ増えようが来年の三月には廃寮が決まっているのは変わらない
しかし学園長と教頭はかねてより一刻も早くつぐみ寮を取り壊したかった
沙衣里はその陰謀を暴くために航に協力を申し出る
嫌々ながらも航は協力し、学園長と教頭のバックにいる人物を特定しようとする
空港で張り込みを続けて学園長と教頭が胡麻を擂っている人物を発見
尾行して少しでも情報を仕入れることに
料亭に入って行った3人をひたすら待つこと数時間
ようやく出てきた一向の会話に聞き耳を立てる
学園長と教頭がおべっかを使っていた相手の行き先が判明
市内のホテルに宿泊するようだ
ここで順調に盗み聞きしていた二人に突如危機が訪れる
教頭が小便に耐えかねたのか運が悪い事に二人が隠れている場所のすぐ近くまで来てしまう
顔が割れてしまうのだけは絶対に避けねばならない状況だった
だがこのままではどうしても顔を見られてしまう
やむを得ず二人は公然でイチャつくカップルを演じ、お互いの顔が見えない手段としてキスをする
幸い、教頭は二人の正体には気づかず鼻で笑い去っていった
航は擬似的な恋人関係を演じたつもりだったのだが、沙衣里はそれがまんざらでもなかったらしく航を気に入ってしまう
確かにキスまではやり過ぎだったかもしれない、フリだけでも十分だったはず
しかし目を閉じた沙衣里も沙衣里で"目を閉じる=その気がある"と解釈されてもおかしくない
沙衣里は航に自分に気があるのかどうかをハッキリとさせたかった
なので好きに振舞え!と航に告げたらノリでやってしまったにせよ航も沙衣里に対して本気になってもいいと言う
けれども航と沙衣里の間には大前提が存在する
どうやっても超えられない教師と生徒の壁
バレてしまったら只事ではない
今ならばまだ引き返せる
教師と生徒のルールを逸脱した暁には世間体という枷が常に付き纏う
それを背負ってでも沙衣里は航を受け入れた
背徳的な恋愛を続ける二人が失態を犯したのはそれから少し経った後
ラブホテルで性行為をに及んだ際に不覚にも航が生徒手帳をその場に落としてしまったのだ
従業員によって学園に届けられた航の生徒手帳
学園長と教頭がそれに目を付けないはずが無かった
沙衣里と航は学園長室に呼び出される
沙衣里は生徒の監督不行き届きだと叱られ、航は下手をすれば停学ではなく退寮処分にまでされかねない勢い
ひたすら糾弾され続ける航と沙衣里
沙衣里がその呵責に耐え切れず全てを自白しそうになったところで航は沙衣里を庇い、島に遊びに来ていた子と行為に及んでいたと言う
沙衣里に対する被害は最小限に抑えられたがどちらにせよ航が大きな損害を被るの可能性は否定出来ない
この事を寮のみんなに告白すると一斉に非難される
罵倒するだけされた後は今回の失態をどう取り繕うかを検討
沙衣里は航に泣きつくばかりで正直アテにならない
だが今回の事は教師である沙衣里に頑張ってもらわないとどうしようもない
航は沙衣里を励まして勇気をつけさせた
航の処分に関する教職員会議が始まった
今回の航の処分はそれ相応のものが必要だと言う先生が沙衣里を除いて一致していて覆すことは不可能に思われた
しかし沙衣里は卒業生で航よりも傍若無人に振舞っていた三田村隆史の例を引き合いに出す
比較対象としては十分で隆史はどれだけ暴れようが停学止まりだった
さすがに航よりも酷い前例を出されてしまったからには反論を出す教師もいなくなる
一気に旗色が変わって航の退寮、退学処分は免れた
沙衣里は自分の頑張りを航に認めてもらい、航も沙衣里に深く感謝した
数年後、航は沙衣里と同じ道を歩む事を決意し高見塚学園に帰ってくる
都合のいい事に理科の森本先生が今年で定年なので来年の担当がいなくなる
航は狙い澄ましたかのようにその空席に滑り込んで沙衣里と同じ場所で過ごす
END
■約束の日ついに3月21日がやってきた
みんなで過ごした思い出の場所に別れを告げる時
各々身支度を整えて私物を全部各自の新しい住居に運び込む
すっからかんになった寮で思い思いの時を刻む
卒寮式
沙衣里が全員に卒業証書を配っていく
最後に卒寮生代表として奈緒子が答辞を行う
そしてこの日のために念入りに調律しておいたピアノに航が座り、他のみんながこの日のために作った歌を斉唱する
END
★茜つぐみ寮が取り壊されてから数ヶ月が過ぎた
みんなとは散り散りになってしまい、航は沙衣里と二人南栄生島で過ごしていた
素行不良だった少年はいつの間にか品行方正の優等生に変わっていた
先生の言いつけをきちんと守り、成績も徐々に上昇して優等生の模範的存在に生まれ変わった航
厳かな生徒会長をやり続けていた
それが"普通の生徒"の在り方なのに航の友人である紀子、雅文、茜は違和感ありまくりだった
去年までとは正反対の性格にどことなく近寄りがたさを感じる
茜はそれでも持ち前の明るさで航に話していた
またあのやんちゃで問題児な航に戻って欲しい
そう信じて茜は航を夏祭りに連れ出す
茜に励まされ少しは元気を取り戻したものの、水を差すように現町長である野川と現校長である塚田、さらにはこの島の開発を進めている坂田がやってくる
つぐみ寮を潰した張本人達と話すのは胸糞悪いので石段を登って見つからないように退避する
しかしその石段の先に行ってはならなかった
撤去されたつぐみ寮の跡地
ここにリゾートホテルを建てるというのが彼らの目論見
衰退しつつある南栄生島に活気を取り戻そうというのだ
今までは近寄ろうとしもしなかった場所に近づいてしまったことで改めてつぐみ寮は失くなってしまったのだ、と再認識した航は悲しみに沈む
どう転んでもあの建物がここに復活することはない
現実を噛み締めた航は絶望に嘆く
一人になりたくて崖を滑り降りて船着場に向かってただ悲嘆に暮れる
そんな航にまだ手を差し伸べてくれるのが茜だった
ここまで情けなくなってしまった航をまだ奮い立たせようとする
茜のとてつもなく枯れる事のない元気と勇気を受け取って、まだ自分に出来る事があるはずと思い直す
徐々にいつもらしさを取り戻した航はこれ以上この島を野川達の好き勝手にはさせまいとして一誠の力を借りることにする
一誠に今度の町長選に出てもらい、再び町長として返り咲いてもらおうというのだ
顔が広く、誠実で威厳がある一誠が町長選に出たら当選するのは火を見るより明らか
一誠も島のために快諾してくれた
航はそれから同窓会を催すことにした
かつての同胞達からも前々から連絡くらいは来ていたのだが如何せん航がもぬけの殻だったので有耶無耶になってしまっていたのだ
自分らしさを取り戻した航
つぐみ寮は無くなってしまったが再びみんなとこの島で会えることを心待ちにするのだった
■各シナリオ感想
●海己海己は一番力入れてると感じさせてくれるシナリオだったかな
海己と凛奈はダブルメインヒロインな気がするんだけど海己が個人的には一番です
もどかしさが胸を抉るような、そんな展開
「こいつはなんか6人の中で一番シナリオ良さそうだから最後にやろーっとw」って取っておいてよかったwww特に良かったシーンがエピローグでの一言

この"星の海"って表現はすごく良かったね
これ絶対狙ってたんじゃねーかと思うww
航と海己が結婚するって描写が出てきた時点で名字が星野になるってことに俺は全然気づかなかった
ここが一番グッと来たシーン
やられたわーwって気分になったw
●静静のルートは
『静ではなく会長が最高にイケメン』静が関係ない件についてwwwwwwwwwww
マジここの会長死ぬほどカッコよくて泣きそうになったwww静が実家に帰るのが嫌なのを説教しようとした時に使った表現が最高に良いんだよ
プール=実家に置き換えて話を進めていくんだけどここの下りが感銘を受けるね、ホント良い
静はここの会長見るためだけにやる価値ある
何回見ても良いシーン
●凛奈凛奈ルートの見所はピーター・パンの演劇での海己との劇を通じてのやり取りかな
演劇からズレたところで凛奈に訴えるかける海己の優しさに心を惹かれるなぁ
あとエピローグでのマラソン大会での詳細なシナリオが欲しかったってはある
最後の肩車されてるシーン見る限りじゃ好成績残せたっていうのは予想出来るけど
●奈緒子奈緒子は一番丸戸らしさが出てる作品かな
WA2やってから思うんだけどやっぱ丸戸は三角関係系の描写がよく映えるw
真骨頂だね
まぁさすがにこのゲームでドロドロやってもらったらそれはそれは雰囲気ぶち壊しなんだけど(個人的にはやってもらっても全然構わなかったw)
辻崎先輩とばっちり過ぎて糞ワロタwwwwww
あなたには本当に同情しますwww
超かわいそうwww
●宮穂宮穂はこれといって取り上げるべき良いシーンは無かったんだけど泪島に行ったとき海己と航の相合い傘を発見したシーンでテンション上がって「ドロドロ展開クルー!?」と舞い上がったのに来なかったというオチ←どんだけ俺は三角関係好きなんだって話w
●沙衣里沙衣里もうーん・・・って感じw
イチャラブ要素が他のルートに比べて強いかなぁw
特筆すべき点も見当たらないかねぇ
●約束の日本作で恐らく涙する人が大量にいるんじゃないかと思われるシナリオ
6ヒロインをクリアした後に出現し、つぐみ寮の廃寮までを描いたルート
うん、これは会心の出来だったね
最後の最後でドーン!とでかいの持ってくるねぇw
短いんだけどどのルートよりも圧倒的に好き
文句ない
それに加えて
"EDの破壊力"
やばいwwwこの演出絶対戯画が総力を上げてユーザー泣かしに来てるwwwwwwあぶないあぶないwwwwwwwってぐらいに良い演出
まぁ泣かなかったけどな!!(ギリギリこらえたw)●茜約束の日をクリアした後に出るおまけルート
他のヒロインと比べて短い
約束の日の後日談ルートっぽい?
そのまま繋がっているようにも感じられる
最後のCGで航が持っていた合わせ石の片割れが実は茜のヤツだったという事が判明する
伏線回収
全部引っくるめたルート評価は
約束の日>>>海己>>静>凛奈>奈緒子>宮穂>沙衣里>茜
■キャラ浅倉奈緒子>羽山海己>六条宮穂>>>三田村茜>桐島沙衣里≒沢城凛奈≒藤村静
▲浅倉奈緒子表の性格と裏の腹黒い性格の二面性を持つ御方
こういう人大好きですwww
すごく頼りになる生徒会長でもある
味方には甘く、そうでないものには厳しくと線引出来る
素の性格は滅茶苦茶高慢ちきw
見下したような態度がたまらんです
しかし・・・その・・・なんというかですね・・・非常に申し上げにくいのですが、最初声聞いた瞬間にですね「なんだこのオバサン!?(驚愕)」って言ってしまったのは許してwwwwwwwwwwwwwwwwwwあとで声優調べたら折笠愛じゃねーかwwwwwwマジすいませんガンダムサンドロックに搭乗しているカトル君は俺結構好きなんだぜ・・・←ホモガンダムW一話も見たことねーけど正直に言おう"第一印象の声は合ってない"ただあくまで第一印象なのでやっているうちに段々と慣れてくる
最終的にはこの声でもありかな、程度には思うようになるよ、たぶん・・・www

傲慢最高!
ニーソックがポイント高い

見えないところまで気を使う女性大好きです!
ペディキュアいいっすねぇ^~

挟まれたいです!!▲羽山海己
エ ロ カ ワ イ イ
エロシーンは海己ダントツだったぜ
他のキャラで全然勃たなくて「俺インポなのかもしれん」と焦ったけど海己だけは勃起したわキャラのイメージと声優のチョイスが滅茶苦茶マッチしてるってはっきりわかんだね
というか俺がこういう性格のキャラを好きになることはかなり珍しくて自分でも割りとびっくりしている
シナリオがいいキャラは大概キャラランクが低いという両極端になる俺にしては(別に狙ってそういう風にしてるわけじゃないよ!)異例の事態!たまにはこういうことがあってもいいよね

ジャージ姿がめっちゃカワユイ!▲六条宮穂六条家のお嬢様
大家兼理事長でもあり役職だけ見ると大物に見えるが本人はものすっごく鈍臭い
そのギャップが良いけども

立ち絵見た時、藤原妹紅か何か?って思ってしまった
先輩!まずいですよ!(遠野リスペクト)
ダブルクリックなんて簡単ダルルォ!?▲三田村茜とにかく忙しい喋り方w
よくこんな忙しく喋れるわと感心した
聞き覚えのある声だと思ったら夏野こおりだった件
あぁ^~夏野の声大好きなんじゃ~

航君航くんわったるく~ん!↑
これクセになる
▲桐島沙衣里教師でありながらあどけなさをいつまでも残してる
みんなと6歳以上離れているというのに会長にはいつも言い負かされているし、教師としての面目があまり感じられないw
酒が大好きで呑んだくれのダメ教師っぷりが板についてるw
▲沢城凛奈凛奈はデレる前のツンツンしてた方が好きだったんだよなぁ・・・(無念)
素の性格じゃないから仕方ないんだろうけど・・・
あと声優
こっ、この声はッ・・・!?
グレート山田アターーーーック!!!んーと、声優は河合春華だぁ?
そんなことないだろぉ?
河合春華=こおろぎさとみ
やっぱりこおろぎさとみじゃないか(憤怒)そういえばこおろぎさとみの声聞くのG線の花音以来だわwww
しかし未だにギルティのメイの声が頭にこびり付いて離れねぇw
英語の勉強している時のこの台詞はなんかツボに入ったwwwww


(Airネタは)やめてくれよ・・・(絶望)▲藤村静口数が少なく無口
まともな教育を受けないから色々と問題があるのはわかるけど、俺は聞き分けが良くなかったりわがままなキャラは好きじゃないんだ・・・ごめんよ
無口ってポイントは良いんだけどね
これで理知的でクールだったら逆に大好物
た・だ・し!
エピローグでの静は十分可愛いと思えるレベル
髪もショートからセミロングになってて愛嬌倍増
ずっとこのままでいてくれよな、頼むよー
■曲・BGMOP
OP full
挿入歌
ED
ED(Chorus ver.)
OPはKOTOKOで安定のクオリティの高さ
しかしこの作品の最大の魅力と言えばED
Chorus ver.での声優全員の泣き演出は完全に出し抜かれたw
会長マジ泣きしてんじゃんwwwww宮穂と静の声が聞き取りにくいのはきっと俺の耳が悪いせいだ
通常のバージョンもいいけどコーラスバージョンはさらに良いんだよなぁ・・・(恍惚)
このEDこそが最大の涙腺ブレイカーだったりw
BGM
何気にBGM超優秀なんだよなぁ
シーンによってはBGMでやられることもあるくらいだし
■総合シナリオ面は俺の大好きな丸戸史明なんで全然心配してなかったし、予想通り最後に盛り上げてくれたから大満足
丸戸の書き方は相手に展開を妄想させるのがすごく上手いと思うんだよぁ
思わせぶり書き方をするのに魅了されるっつーか
それはいいんだけどちょっとヒロイン多すぎたかな~感はあり
何せ6キャラだからなぁ(茜も入れるなら7キャラ)
今じゃ4キャラが主流になりつつあるんじゃないかな
何が言いたいかっていうとシナリオの良さが分散してしまってる感があるんだよね
1キャラで複数回見せ場がある方が俺は好みかも
あともうこの手の学園モノは腐るほど見たというのもある(たぶん言うほど見てない)
とは言っても勘違いしないでもらいたいのは同じ学園モノだとしてもちゃんと計算高く作られているので学園モノの中ではクオリティは高い
目新しさを感じないのがネックか
しかしアニメやエロゲに拘わらず学園モノの設定なんてそれこそ枚挙に遑がないわけで
人によっては個別に入るまでダレて少し退屈に感じるかもしれない
でも個別に入ってからは1キャラ大体4時間ぐらいで終わると思うのでサクサク終わらせられる
長いキャラもいたような気がしないでもないw
付け加えて島での話がメインになるって時点で即座に"あすせか"(そして明日の世界より――――)を思い出した
あっちも島での学園モノだったからねぇ
まぁこっちと違ってあっちは生きるか死ぬかの死活問題でもっと切迫してるんだけどwww
何気に戯画のコンフィグ設定は細かく設定出来るので好き
バルドスカイやまじこいとかとウィンドウが一緒w
このウィンドウ見やすくて好き
6年前の作品だけど全然色褪せてないね

イベントシートってのがあって自分が今どういう選択しているのかがわかったりする
なんて親切な設計なんでしょう!(感動)懇切丁寧過ぎて吹いたけどね
そこそこのボリュームがあるし何よりエロゲ入門には最適のゲームかと
でもこんにゃくから入っちゃうと他のエロゲやった時に物足りなさを感じてしまうかもしれないw
十分に楽しませてもらいました
人によっては神ゲー扱いされるかな~エロゲの中でも有名な方で
・PS2に移植済み
・PSPに移植済み
・GREEに移植済み←NEW
・2007年にアニメ化してる←ファッ!?(知らんかったw)と名作のほどが窺えるであろうw
じゃけんアニメ見てきますね~(ニッコリ)
どうせ地雷だろ(ボソッ)
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D(微)
fortissimo//Akkord:Bsusvier