2005年発売
今から7年くらい前かな
ブランドはpropeller
■シナリオ太平洋戦争が終わってからある種の病、もとい奇病が流行りだした
人ならざる力を持つもの――――ASSHS(アシュス)
後天的全身性特殊遺伝多種変性症が正式名称
ただこの名前は世間一般に広く知れ渡ってる名ではなく人々は皆、これを"人妖"と呼んだ
"武部涼一"は逃走していた、少女と共に
この日、ついに織咲病院から脱走することを決意した
傍らの少女の名はすず
何故脱走するに至ったかというと問題事を起こしてしまったから
涼一の友人である里村陽大と雪野くるみの恋愛沙汰に介入してしまったのがそもそもの原因である
院長の息子である織咲芳郎は雪野くるみに目を付けていた
院長の息子ということで誰も口出し出来ず、院内ではまさに傍若無人の振る舞いをしていた
そんな芳郎がくるみへのアプローチを始めたのだ
しかし陽大とくるみは仲がよく恋人も同然だった
陽大はくるみが芳郎に無理矢理奪われるのではないかと危惧して涼一に助けを求めた
涼一は基本的に他人同士の諍いには首を突っ込まない主義だったが、友人の助けを無碍に断るわけにもいかず仕方なく無難な方法をとった
彼の父親である院長に息子の好き放題ぶりを伝えた
すると院長は芳郎をしっかりと叱りつけた
しかしこれがさらなる火種となった
院長に伝えた人物を芳郎が即座に探し出し、それが涼一だと分かってしまった
なんとなくこうなるんじゃないかと分かっていた涼一は辟易としながらも芳郎とその部下達に呼び出され、病院の裏手にある森の入口近くまで赴くことに
案の定くるみの件で取り巻き達にボコられる涼一
逆らうことはしなかった
自分の力ならばこの程度の実力の人間を倒すのは簡単だったが後が面倒だからである
そんな涼一を見かねてか、森の奥から一匹の"狐"が飛び出してきた
涼一と幾度と無く過ごした狐だった
狐は芳郎の顔に噛み付いた
パニックになる芳郎に取り巻き達が駆け寄り狐を引き剥がして木に叩きつける
その光景を見てしまった涼一は温厚を貫いていた自分の心を解き放った
自分のとても大切な親友を傷付けられたことに対しての怒り
ボロボロの体でなお立ち上がり芳郎とその手下達をさんざんに痛め付けた
だがそれが後々になって自分に返ってきた
その光景を騒ぎを聞きつけてやってきた警備員達に見られてしまう
そして涼一はあまりにも相手に酷い怪我を負わせたとして代償に手負蛇(ウーンデッドスネイク)を全身に埋め込まれることになる
しかし手術当日、右手の手負蛇の埋め込みが完了したところで涼一は脱走を決意する
でもここは周りを海に囲まれた孤島
逃げられる可能性は低い
そして逃げる方法はひとつしかない
海を利用しての逃亡
港に船が行き来しているのを知っていた涼一は船着場まで行こうとする
だが行くにしてもひとつ気がかりがあった
すずの存在である
10年来の付き合いであるすずをこの島に置いていっていいものか・・・と悩んでいるとちょうど良い所にすずがやってきた
そして信じられないことに眼前の狐は"人間"に姿を変えたのである
さらに言語まで話し始めた
10年一緒に居たにもかかわらずこんなことは今日、今の今が初めてで何が何だかわからなくなって混乱する涼一
けれども悠長に話している暇はなかった
すぐに追っ手が迫っていたのである
この孤森島にすずは愛着と言葉では言い表せないほどの事情があったが親友でもはや家族みたいな存在である涼一についていこうと決めた
そして二人が船で脱出しようとする直前で追っ手がすぐ背後まで迫る
だがすずの言葉を聞くなり警備員達は怯えだし次々と膝を付いて降伏し始めた
すずは"言霊"といって言葉を発することによって相手を従わせる能力を持っている
それにもかかわらず言霊に抗った一人がショットガンを二人に突き付けた
しかしショットガンは涼一の力、『金属を手元に引き寄せる』能力によってあっさりと奪われてしまう
不可視の赤い糸を使って最後に手元に引き寄せたショットガンを空に一発撃ち放ち、涼一はこれを門出の祝いとした
目が覚めたのは砂浜の上
なんとか孤森島からの脱出は成功したらしい
本州に到達したはいいが、これからやるべきことは山ほどあった
先ずはこれからどうするかだ
お金もない、寝床もない、食料もないと無一文三昧な涼一は気は進まないけど道路でハイジャックをすることにした
犯罪者になるのは何とも気が引けるがじっとしていては生死にも関わることなので仕方がない
深夜にもかかわらず都合よく通りかかった乗用車の前に飛び出した
運転席にショットガンを突き付け脅す
半ば強引にすずと一緒に乗り込んだ
運転手のおっちゃんは苦虫を噛み潰したような顔をしながらも涼一の指示に従うことにした
仕方なくおっちゃんは自分の家に二人を招くことにする
おっちゃんは裏稼業の人間で闇医者と呼ばれる類の人間だった
時には犯罪者の依頼を受けることもあっただけに特に涼一達に対しては憤りも感じていなかった
おっちゃんは要件だけを言うとすぐに隣の部屋に行って眠ってしまった
なんとか一息着いた涼一とすず
今宵の寝床は確保出来たようだ
と思ったのも束の間、人妖と言う単語が涼一とすずの会話の間で出るや否や、いきなり拳銃を出しておっちゃんが突き付けてきた
おっちゃんは人妖に対して尋常ならぬ恨みがあった
かつて人妖に自分の娘を理不尽に殺されていたのだ
それ以来人妖という言葉を聞くだけで嫌気が差すし、常々殺したいと思っていた
当然のことながらおっちゃんの娘を殺したのは涼一ではない
涼一は落ち着くように話しかけるが問答無用でおっちゃんは銃弾を涼一の体に撃ち込んだ
それを見るなりすずが激怒する
言霊を付かせておっちゃんを殺そうとするが意識が薄れつつある中、涼一は必死にすずに「頼むから殺さないでくれ」と訴え続けた
すずは歯軋りする思いに耐えつつも最終的にはおっちゃんを殺さなかった
朝目覚めると涼一が撃たれた場所には治療が施してあった
おっちゃんが治療してくれたようだ
あの後、おっちゃんはようやく悟ってくれた
自分の娘を無惨に殺したのは人妖だ、だが目の前の彼に罪はない
当たり前のことだが長い間培われた人妖への恨みは理性を凌駕していた
おっちゃんはその一件の後、涼一とすずのこれからを示してくれた
ほとんどが人妖で構成される都市、"神沢市"への移住を勧めてくれた
人妖は世間体での評判があまり良くない
人妖というだけで毛嫌いする人はたくさんいる
そんな人妖達が安心して暮らせる都市がこの神沢市だ
涼一はそれを了承した
するとおっちゃんは何から何まで全部取り計らってくれた
涼一は感謝してもしたりないくらいだとも思ったが、おっちゃんからすれば撃ってしまったせめてもの罪滅ぼしのつもりだったのかもしれない
さらに涼一は追っ手があることもあって神沢市に入るにあたって偽名を使用することにする
"如月双七"それが彼の第二の名前だった
すずは双七の妹ということにして、如月すずという名前で登録した
神沢市検問の前で車から降り、おっちゃんに感謝してもしたりないくらいの礼を述べて別れ、双七とすずの新しい生活は始まった
マンションに住居を構え、おっちゃんの推薦してくれた神沢学園への入学を果たす
しかしすっかり人間嫌いになってしまった(双七は例外)すずは学園への登校を渋っていた
しばらくの間は双七一人で登校していた
双七は昔から学校というものへの羨望を抱いていた
幼い頃からずっと病院で過ごしてきた双七はこの学校生活というものがとても楽しく有意義であることに満足していた
すずにもその良さを分かってもらうべく、再三説得してようやく納得してくれた
乗り気ではないすずだったが双七が一緒ならば良いと
クラスですずが紹介されるなり教室はてんやわんやとなり一躍興味の対象となってしまった
クラスの人妖達に愛想笑いしてやり過ごしていくすず
それだけならばまだ良かったのだがついに問題が起こってしまう
双七の目の届く範囲でのすずは全く問題を起こさなかったのだが、双七の目の届かないところがまずかった
女子の体育の時間、他の生徒達が競技に勤しんでいるのをずっと見学していたすずは一人の生徒に参加してみない?と言われ、すずは遠慮したのだがその生徒は少し強引にすずの手を取って参加させようとしたのだ
すずは激高して「触るな、下郎!」と怒鳴ってしまったのだ
それがクラスの女子達からの非難を浴びることとなってしまい、双七は頭を悩ませた
どうしてそこまで人間嫌いなのかと双七はすずに問う
「自分の母親が人間に殺されていてもそんなことが言える?」とすずは悲しげに言った
双七はショックを受けた、双七はすずの過去についてまだ何一つすら知らなかったのだ
自分の無知さを呪った
そんな自己嫌悪に陥っているときに突然忍び寄る影が
明らかに常人ではなかった、空を飛ぶようにして現れた人間――――の姿をしているが明らかにそれではないと判断出来る
名を鴉と言った
"親方様"の命令ですずを屋敷へ案内すると言ってきた
無論、双七は勝手にすずをどこぞの知らぬ場所へ連れ去られるのを黙って見過ごすわけにはいかない
自然と相対することになる
だが双七はあまりにも無力であった
そしてあまりにも鴉が強すぎた
勝負は一撃で着いた
意識を失った双七が次に目覚めたのは神沢学園の生徒会室
眼前には無表情、冷静沈着なこの学園の生徒会長である一乃谷愁厳がいた
愁厳はある人からの伝令を伝える「大人しく如月すずを諦めるならば今回のことは全部不問とし、今まで通りの平穏な学園生活を送れる」
もちろんそんな条件を飲めるはずもない
双七は一瞬の隙を付いて窓から飛び降りた
自分の能力を使って赤い糸をロープ代わりにして高々度から飛び降りて地面に着地
安心したのも束の間、愁厳は迷うこと無く双七の後を追って何事もなく着地して眼前に立ちはだかった
逃げられないと悟った双七は一旦校舎に逃げ込む
騒ぎを聞き付けて愁厳の援護にやってきた生徒会のメンバーであるトーニャと刑二郎も加わってますます不利になる双七
消化器を煙幕がわりに使って学校の正門へ向かう
こうして一旦準備をするために双七は退散した
そして夜になってすずを取り戻すべく、双七は支度を整えて神沢学園に向かった
待ち構えていたのは夕方相対した一乃谷愁厳
正攻法ではこの一乃谷愁厳には勝てない
この学園の生徒会長というだけあって実力は折り紙つきだ
なので、あえて正攻法ではなく騙し討ちという戦法をとった
それが功を奏し愁厳を昏倒させるに至る
すずが拉致されている場所まで行き、穏やかな寝息を立てて眠っているのを見て双七は胸を撫で下ろした
しかしそのおかげで背後に迫る気配に気付くのが一瞬遅れた
振り向いた直後、双七の眉間に鉄の塊が当たったというのを朧げに感じてまたも昏倒した
意識が覚醒して廊下に出ると見知らぬ女性が居た
どことなく雰囲気が似ていると思い、聞いてみたら一乃谷刀子と言い、一乃谷愁厳の妹だという
状況は刀子にも伝わっており、今から親方の屋敷に行くことになっているようだ
自分たちをこんな目に合わせたその親方というヤツに文句の一言でも言ってやらねば気が収まらないとばかりに双七はすずを連れて親方の元に向かった
校門に行くと担任の加藤虎太郎先生が待っていた
車で親方の屋敷まで行く事に
刀子も同乗した
親方の屋敷に着くと鴉が出迎えてくれた
少し待つと双七達の前に年端もいかぬ少年が現れた
どうやらこの人が"親方様"と言うらしい
あまりにもあどけない姿で双七は怒る気すら失せた、むしろイジりたくなるほどであった
小馬鹿にしていると親方様と思しき人が怒りだした
実はこの少年こそが天照大御神の遣いであり、3000年以上も生き続けているという"八咫烏"なのそうだ
俄には信じ難いものがあったが少年にはどことなく威厳に満ちた雰囲気があった
そして聡明な物言いに段々とそれが真実であることが浮き彫りになっていく
八咫烏が懸念していたのは問題はこれからのすずの扱いについて
純血な妖怪はもう現存数は少ない
その同族のよしみとして八咫烏はすずに親近感を感じていた
今回のことで八咫烏は如月双七を試していたのだ
すずと一緒にいる人間にすずを守れるだけの力があるか?
すずが危機に陥った時にそれを打開する術を持っているか?
それを確認するべくこういった手の込んだ真似をした
もちろんそれに対しての双七の怒りは最もだが、同時に危機に立ち向かうだけの力がないと思い知らされたのもまた事実
さらに衝撃的な事が八咫烏の口から述べられる
すずは"九尾の狐の末裔"だそうだ
伝説の妖怪である九尾の狐
すずの母親である"静珠"は尾が9本あった
だがすずはまだ1本しかない
すずはまだ200年足らずしか生きておらずこれから時間と共に段々と尾が増えていくそうだ
そしてすずを狙う輩が居ることも
"幻咬"
それが本当の敵の名であった
幻咬は中国から来た妖怪でこれも九尾の狐であった
ただ本体は静珠が既に破壊しており、実質の敵は"幻咬の尾"
この幻咬の尾がすずを狙っており、これらからすずを守らなければならない
身内の仕掛けた罠と言い、この程度の危難も乗り越えられないようではとてもすずを任せられないと八咫烏は言う
自分の無力に打ちのめされる双七
それでも双七はすずを守ると根強く言い張る
八咫烏は今一度双七の言葉を信じ、すずを任せることにした
翌日からはいつもどおり学校に登校した
すずがこの前無礼を働いてしまった子に素直に謝り仲直りしたところで緊迫していた空気も収まった
実にのんびりとした学園生活に満足していた双七だがひとつ心掛りになっていることがあった
右腕の手負蛇である
このままではいつ爆発してもおかしくない爆弾を抱えて生きているようなものだ
そういうわけで生徒会の七海伊緒に紹介してもらって七海病院での爆弾撤去手術を行うことにした
手術の結果、完全に除去は出来なかったもののセンサーとなっている信管を取り外すことには成功した
つまり、何処かからの遠隔操作ではもう爆発しないということだ
直接腕を抉って激しい衝撃でも与えない限りは爆発しないらしい
実質もう爆発しないと断言してもいいくらいだ
肩の荷がひとつ下りた気分になった
刀子ED2 ≧すずED2 >すずED3 >刀子ED1 >トーニャ >薫 >すずED1 >刀子ED3 ●刀子ED2生徒会で刀子がストーカーに遭っているという事が取り上げられた
どうして今まで相談してくれなかったのか、と生徒会のメンバーは問い詰めるが悪質なストーカーではなくむしろ"善意"のストーカーだからなお質が悪いのだ
それで刀子も頭を悩ませていた
何から何まで全てどっかで監視されているような気がして一時も落ち着かない日々が続いていた
刀子は理想のお姉さまとして下級生たちに絶大な人気があった
ファン達の長とも言えるのが藤原那美子という後輩だった
那美子は何から何まで刀子の事を観察していた
段々とそれがエスカレートしていき、やがては立ち居振る舞いまでもとやかく言われるようになった
別にそれが悪意があるわけではなく刀子は気高い存在であらなければならないといういわゆる助言みたいなものだった
しかし刀子にとってそれは居心地の悪いものだった
自分はそんな特別な存在だとは到底思わないし、普通の一生徒として学園生活を送りたいだけだ
だが下級生の女性徒からしてみれば兄と体を共有(というと語弊があるが)していてなおかつ兄も聡明で威厳に満ちあふれているとなれば刀子にもそうであって欲しいという願望が存在するのである
刀子からすればそんなもの知ったことではないが、特に那美子は色々とうるさかった
自分は完璧な人間ではないし、そうであろうとも思わないと一度真っ向から向かって那美子に伝えたのだがその程度では那美子は揺るがなかった
ましてや那美子はどんどん刀子の事が好きになっていた(レズハッピー)
そこで生徒会は刀子に恋人を作って那美子を諦めさせようと手段を構築する
恋人役に抜擢されたのは如月双七
まぁ打倒と言えば打倒になる
早速恋人ごっこを始めることになった二人
だがお互い恋愛経験など皆無なので全く恋人という感じがしない
ギクシャクしており傍から見ればただの先輩後輩か会話が拙い友人同士にしか見えていなかった
そこで生徒会の面子はもっと恋人らしく振る舞うように色々と指示やマニュアルを提示した
最初は稚拙だった行動も段々と慣れていき、恋人とは行かないまでも親友程度には振る舞えるようになってきた
早速、目を付けられる双七
那美子は激怒していた
刀子とお付き合いする男性は完璧な人間でなければならない、それこそ彼女の兄である愁厳のように
だが彼女と彼は体を共有しているから不可能
もしくは愁厳に匹敵するほどの人間じゃないと認めないと言い出した
尚も諦めずに恋人ごっこを続けていると今度は那美子は双七の矯正に方針を切り替えた
刀子と付き合うのならば刀子に相応しい人間になって貰わないと
あろうことか那美子は双七達の部屋に侵入し、盗聴器を仕掛けていた
自分の行動が那美子に筒抜けになっているのが怖くて怯える双七
後日トーニャが来てくれて盗聴器の位置を教えてくれた
しかしトーニャはこれを利用してある作戦を思いついた
これこそ那美子の心に巣食った刀子への幻想を打ち砕く決定打となる
早速刀子にも作戦概要を伝えて双七の家にまで来てもらった
作戦開始
やることは至って簡単でトーニャの兄、ウラジミールが作成した官能小説を二人に読ませるというもの
普段は嘲笑っている那美子も自分の好きな人が自分が下衆だと思っている人間と睦むのは絶対に許せないし、耐え難いはずだ
それを盗聴器に余すこと無く伝えてやるのだ
恥ずかしくて棒読みな演技を続けている二人だったがそれでも那美子は辛抱ならない様子で血相を変えて自宅から双七邸までやってきた
バンバンとドアを叩きすぐに中に入れるように怒鳴り立てる
ドアを開けてどかどかと入ってきた那美子の顔は背筋が凍るほど怖いものだった
出刃包丁を握りしめ双七を殺さんとする勢いだ
振りかぶった出刃包丁を刀子が双七を庇って受けた
刀子の脇腹から大量の血が溢れ出す
那美子は絶望したように刀子に駆け寄りパニックに陥った
そんな那美子に刀子は優しく諭し、倒れる
お芝居、終了
倒れたはずの刀子が何事もなかったようにムクリと起き上がった
恐れていたのは騙されたと知ってさらに激高するかと思われた那美子だったがその心配はなくこの一件にて完全に刀子と双七の前から姿を消した
双七にも最後には謝ってくれたし一件落着に思えた
しかしこの時、刀子が住んでいる一乃谷神社に怪しげな空気が漂っていた
一人の老人が一乃谷神社に向かって歩を進めていた
九尾の狐、幻咬の一尾である"天"であった
ただならぬ雰囲気を感じ取った刀子は目の前の老人と相対する
目の前の老人は老人にはとても思えぬ動きで安々と刀子の剣戟を捌いていく
そして刀子は弾き飛ばされ拝殿の壁に叩きつけられた
そこから物凄い執念を感じ取ってしまった
この一乃谷神社には凶悪な妖怪が封印されている
その凶悪な妖怪というのが幻咬の尾である逢難だった
じわじわと復活の機会を待っていた逢難
封印が解かれ、嫉妬や嫉み、殺戮衝動などを糧にして逢難はここに蘇ってしまう
それも刀子の体を乗っ取って
刀子の体を乗っ取った逢難は刀子の体の中にいる愁厳も始末しようと考えた
愁厳がいるうちはまだ体の制御はどこか上手くいかないらしい
精神世界での戦いが始まった
愁厳はぼろぼろになりながらも逢難と戦い続けた
精神を削り取られた愁厳は何とか刀子本来の魂を守り切ることが出来たがもう戦える状態ではないほどに疲弊していた
逢難はついに自由を獲得した
手始めに天を斬り殺した
そこに駆けつけた双七を見るなり狂気に震えた
逢難は折角刀子の体を手に入れたというのに双七の体に鞍替えしようとしてきたのだ
刀子に取り憑いているものが離れることで刀子が救われるならそれでいいじゃないか、と思った双七は自分の体に逢難を受け入れる
圧倒的なまでの破壊衝動が体を駆け巡る
双七は自分の体内に潜む逢難との戦いが始まった
まず人が大勢いる場所はダメだった
殺したくなるし犯したくなる
よって人気の少ない廃工場へと逃げ込み一人で過ごすことにした
逢難が完全に双七を取り込むまでにはまだ少し時間が掛かった
ずっとここに引きこもっているわけにもいかない
最低でも食料は必要だった
食料を買いに出かけたらすず、それと八咫烏一向と出くわした
すずはともかく八咫烏たちは完全に敵対心を剥き出しにしていた
逢難が取り憑き、まだ如月双七の自我があるこの状態の時に仕留めなければならないと判断したようだ
すずは困惑しながらも何も言えなかった
ただ一人、その場にやってきた刀子だけが双七の身を案じてくれた
双七と逢難はひとまず退却することに同意した
すると次に襲いかかってきたのはドミニオン
第17戦闘隊の連中はもう神沢市に潜入しており薫と九鬼が双七の自宅までたどり着いていた
他の四名と双七は出くわしてしまった
いかに逢難が憑依し身体能力が上がっている双七でも4人を同時に相手するのは荷が重かった
しかし相手が一人だと思って油断した一奈を昏倒させ、零奈が一奈を安全な所へ避難させて戻ってきたので3人は相手にしなければならない
一兵衛にあちこちを切り捨てられ、輝義にあちこちに銃弾を撃ち込まれ、零奈に体全体を凍らせかけられようとしていた
やはり3人同時では無理があった、"人妖"の肉体では
命が尽きる瞬間、逢難は双七に呼びかけた
このまま死にたくなかったら魂を同化させろ、と
双七は悪魔の契約に同意してしまった
直後、千切れた体の部位が瞬時に再生していく
まるで不死身にでもなったように
あちこちが補修されていく珍妙不可思議な現象を前に一兵衛達も信じられないという驚愕の表情を浮かべた
今この時より、如月双七という人間は居なくなった
"名も無き妖"それがこの個体の名前だった
妖は零奈を貫手で瞬殺すると同時に輝義と一兵衛も赤子の手をひねるように殺した
さらに廊下で九鬼と出会い懐かしの再会にもかかわらず笑いながら殺した
だが九鬼はまだこの時復讐の念に捕らわれていてその屈強な意志が体を蘇生し、即死だった傷を再生させる
九鬼もまた化物だった
側に居た一奈を縊り殺し、九鬼は悪鬼オーラを霧散させた
もう如月双七の自我はほとんどなくなっており表面には逢難の狂気地味た笑みが浮かび上がるだけだ
さらには薫まで傷を付け、あてもなくフラフラと破壊を楽しんでいた
しかし妖を止めるべく刀子たちも行動を開始していた
逢難を双七の体から除去するには魂振りを行うしかないと判断した
その作戦には九鬼も参加した
かつての弟子であり、薫に救ってやってほしいと懇願されれば九鬼も反対せざるを得なかった
魂振りというのは独特の歩法を踏むことにより神霊を降下させるというもの
そして刀子の中に一旦逢難と如月双七を取り込み、精神世界で分離作業を行うという
それを行うに当たって必要なことがあった
魂振りは独特の方法のため相手に気取られてはならない
さらに魂振り中に襲われでもしたらそれで一巻の終わりなので刀子を守る人材が必要だった
それを九鬼が担当した
かくして魂振りは妖の眼前で見事成功し、逢難と双七を取り込んだ
刀子は精神世界で妖の中に居る如月双七の魂に向けて必死に訴える
あと一歩で刀子の魂が斬り捨てられるというところで逢難の中から現れたのは愁厳
やられたかと思っていた愁厳の魂は逢難が双七を標的にして憑依した時に一緒に移っていた
いつ現れるか機会を伺っていたのだ
妖の体から愁厳が這い出てくる、それに続いて双七の魂も這い出てきた
今や双七の体の中にいるのは逢難のみ、これで心置きなく倒すことが出来る
双七と愁厳はタッグを組んで逢難を見事打ち破った
戦いが終わった後、愁厳の魂はもう限界にまで迫っていた
前に逢難にやられた時に余力はほとんどなくこれが最後だと自分でも自覚していた
愁厳はこの体を刀子に譲り渡し自分は消えることにした
未練が無いわけがない、だが牛鬼の先祖を持つ刀子と愁厳はいずれどちらかが消えなければならない運命にあった
それを兄の愁厳は刀子に譲ったのだ
精神世界から帰還を果たした双七は自分の体がちゃんと自分の思い通りに動くことに安心した
双七はこんなにも自分の事を案じてくれた刀子を絶対兄の分も含めて幸せにしようと誓ったのだった
数年後、生まれてくる子供に双七と刀子は迷わず"愁厳"という名前を付けた
END
●すずED2 八咫烏がすずのことを気に入ってるらしく、すずを以前のように屋敷に招き入れていた
双七はそれが何となく気に入らないというか胸がチクチクするというか、いわゆる嫉妬の感情を抱いていた
同じ妖怪だということもあり気が合うし、何より双七の知らない静珠のことをよく知っているのが大きかった
すずは静珠の話になると飛びつくように聞きたがるし、歓喜の表情が目に見えてわかる
だが深夜になっても帰ってこないすずにさすがに心配したのか八咫烏の屋敷まで自転車で直接迎えにくことにした
屋敷に到着して襖を開けると実にのんびりと過ごしているすずと八咫烏がいた
呑気にテレビなんか見て楽しんでいた
帰りは鴉が車で送ってくれると言ってくれたが遠慮して二人で自転車で帰ることにした
すずがどうしてわざわざ来てくれたの?と問うて来たがなんか面と向かって言うのも恥ずかしい双七は誤魔化した
この時、双七はすずの事をこれまで家族だと思ってきたがまさか家族以上の好きという感情を無意識の内に抱いているとは知る由もなかった
打って変わって近頃、神沢学園の生徒が夕暮れ時に金嶺学園の生徒からの誘拐被害に遭っているらしい
運が悪いことに双七とすずもそれに巻き込まれることになる
双七はすずを誘拐されてしまう
場所を探り当てた双七はたむろしていた生徒たちを片っ端からコテンパンに締め上げていく
すずは首を圧迫されて気絶させられていた
片がついた後すずを病院へ急いで搬送し後始末は愁厳に任せた
だが目が覚めたすずは記憶喪失になっていた
性格に言うと静珠が殺されたすぐ後の状態になっておりひどく人間嫌いしていた
見舞いに来た生徒会のみんなを即座に部屋から追い返し震え出した
こうなったら同族の妖怪でないといけない
八咫烏に連絡したらすぐに駆けつけてくれた
八咫烏は厳しい瞳で双七を睨みつけて頬を叩きすずを連れて屋敷に帰っていった
双七はすずと話がしたくて毎日八咫烏の屋敷に通い続けたがすずは拒否し続けた
完全に人間を恐れていて忌避していた
どうしても話がしたいのならと鴉が面白い提案をすずに言ってみた
すずは面白そうにその提案を受け入れた
双七がすずと会う条件は鴉に実力で勝つ、という厳しいものだった
諦めずに何回も通い続け、戦い続けた
虎太郎の特訓も受けてようやく鴉を打ち倒したはいいものの、すずはやっぱり人間を好きになれずにいた
"二度と私の前に現れるな"と言霊を憑かせ、一緒に来ていた美羽共々追い返す
言霊が憑いて以来、すずのことを考え続けるだけで恐怖心に駆られるがそうも言ってられない
言霊に抵抗するとものすごく身体的苦痛を伴うがそれにも負けず双七はすずのいる八咫烏の屋敷へと向かった
すずは言霊が付いているにも関わらず自分に迫り寄ってくる双七を見て逃げ出した
双七はそれでもすずに記憶を思い出して貰えるように必死に語り続ける
双七の諦めない心がそれを叶えたのか、すずの首に付けた鈴がちりんと鳴ったと同時にすずは記憶を取り戻した
記憶を取り戻したまでは良いものの、双七と美羽に憑いた言霊は"二度と"という永続的な効果が付与されていて、解除するにはすずが九尾の狐であるという資格を捨てなければならなかった
それは尻尾を切る事で成就する
尾が一本でも残っていれば尾は時間と共にまた生えてくるがすずは元々まだ一本しか無いため、それを切ったらもう二度と生えてこないことになる
そして幽世で母親と会う権利を失うということ
妖狐にとって尻尾というものは魂を形作る器に等しい
すずがもし尻尾を切ってしまえば、母親に会えないどころか人間の幽世にも行けず未来永劫一人ぼっちで過ごすことになる
だがすずに取って九尾の狐やらのプライドは正直どうでも良かった
そんなことよりも親しくなった友人や好きな双七が苦しんでいるのを見ながら生きていくほうがよっぽど苦痛だった
八咫烏は母親に会うのはこれが最後になると念を押して、双七とすずの魂を幽世に連れていってくれた
幽世にて久しぶりに静珠と再会したすず
不肖な娘でごめんなさい、と静珠に謝るすず
しかし静珠はすずが九尾の狐であることを失ってまでしてなお大切な物が出来たことに心から喜んで祝福してくれた
それから現世に戻ったすずは八咫烏によって尻尾を切断された
これですずはただの妖狐になったと同時に妖怪でありながら人間の心を併せ持つ『あやかしびと』になった
無事、これからは安寧な日々が過ごせると思ったが問題はドミニオン
双七がちょっと目を話した隙に居所を突き止めた九鬼がやってきてすずを攫ってしまう(毎度思うがすずは簡単に攫われすぎwww)
一緒に居た美羽が必死の抵抗を見せるが無力だった
こんなか弱い少女が抵抗してきたのに九鬼はちょっと尊敬の念を抱きながら自分の行き先を美羽に告げた
この情報を如月双七に伝えることが出来ればお前の勝ちだ、と
一方、その頃双七は双七で薫の襲撃に会っていた
懐かしの再会という雰囲気は全くなく、双七は顔を歪めた
薫はかつて一緒に過ごした少年にこれがせめてもの情けだと言わんばかりに力を加減して真空弾を撃ち込んだ
それだけで双七は気が遠くなるほどの激痛を伴ったがここで呑気に倒れているわけにはいかない
すずと美羽がいた場所までよろよろと向かった
辿り着いた双七が見たのは血の海の中で倒れこみ、瀕死の重傷を負った美羽だった
刑二郎がすぐさま駆けつけ、美羽を病院に連れていきたかったがグッとこられてすずの追跡を優先した
バイクの後部座席に跨ってすずを連れ去った乗用車を追うことに
生徒会の面子も既に動いており、七海が今どの位置にいるかを正確に割り出してくれていた
刀子がタイミング良く車の通る位置に先回りし、斬妖刀文壱で車を一刀両断した
九鬼、薫、比良賀は即座に脱出し、薫と比良賀はすずを連れてその場を去り、刀子の相手は九鬼がした
刀子と向き合った九鬼は楽しめると思ったが、相手に殺気がないことに心底つまらなさそうに愚痴った
相手を殺す覚悟がない、と九鬼に罵られ退屈そうに九鬼は刀子の前から去った
実力は明白だった恐らく戦っていたら即座に負けていたであろう
後からやってきた双七達と合流して再びすず追跡に向かった
すずを無事連れ、後詰を担当している4人の元へ薫と比良賀が戻ってきた
しかしどうも様子がおかしい
薫と比良賀はここで裏切られたことに気付く
すずを手渡してしまったのならもう薫と比良賀に用はない
百鬼夜行計画の邪魔になるだけだと判断した氷鷹姉妹と光念兄弟は二人の殺害に出る
一奈が死に際に比良賀の吐いた焼けるような痰を飲み込んでしまい、重症になってしまったので零奈が搬送することに
薫は殺されるまで後一歩というところで双七の助けを得た
刀子も追いつき
光念一兵衛 VS 一乃谷刀子
光念輝義 VS 如月双七
という2対2のバトルが始まった
双七達が勝った報酬はすずの居所を教えるというものだった
お互いに満身創痍の状態で両者に打ち勝ち、すずの居所を突き止めた
すずが居た場所はかつて双七が人生の半分以上を過ごしてきた孤森島だった
支度をして翌日に向かうことにした
メンバーは双七、刑二郎、トーニャ、虎太郎
病院に到着した一向はすぐさま屋上を目指した
しかし一足遅く輸送機は空の彼方に飛び立った後だった
そこでトーニャはちょっとした職権乱用をして、背中に装着するロケットエンジンというものを配達してもらった
それを背中に装着してスーパーマンの如く空を飛び立つ
双七が空を飛び輸送機に向かっている最中、輸送機内でも一悶着起こっていた
"中"こと雲野修介が百鬼夜行計画の真の概要を語る
それは妖のみでこの日本を埋め尽くすことだった
零奈は聞いていた話と違うと雲野に騙されたのだと理解した
雲野は手始めに一奈に熾天使薬を垂らし、妖に変貌させた
妖に変貌した一奈は側にいた零奈を殺してどこからか湧いた九鬼耀鋼を次の標的に定めた
そこへ双七が物凄い勢いで突っ込んできて、一奈の首を胴体から跳ね飛ばす
九鬼は自分の復讐の敵であった一奈を殺されて双七を恨み、標的を双七に定めた
憎悪のせいか九鬼の姿は異形の妖に変貌していく
こんなヤツをむざむざ相手にすることはないと判断した双七はすずを雲野の手から取り戻し、来た時と同じくロケットエンジンで空へ脱出した
雲野と九鬼を乗せた輸送機は海の藻屑となっていった
――――1ヶ月が過ぎた
双七の前に現れたのは九鬼耀鋼――いやもう九鬼耀鋼とは呼べないほど強大な存在になっていた
九鬼はこの1ヶ月であちこちに封印されていた幻咬の尾の全てを喰らい尽くし、今や九尾の狐を超える存在へと成り果てていた
さしずめ、"九尾の鬼"といったところか
九尾の狐に勝つにはこちらもそれと同等の存在にならなければならない
双七は熾天使薬(セラフ)を自分の首に打ち込んだ
熾天使薬は限りなく妖の能力を引き出すと同時に妖になってしまう強力な薬
人間を、やめた
妖対妖の世界最大級の戦いが始まった
結果は同士討ち
お互い深海数千メートルまで沈んで力尽きた
双七と九鬼は共に幽世に来ていた
死後の世界というのはこういうものなのだということを味わっていた
やがて九鬼も去り、双七は一人ぼっちになった
そこへ八咫烏が現れて現世に帰りたくない?と問いかけてきた
帰りたいのは山々だけど、魂を宿らす肉体がない
すると八咫烏は自分の肉体を使えばいいと言ってきた
有難い提案だったがそれでは八咫烏がもう二度と現世に戻れなくなってしまう
しかし八咫烏にもずっと会いたい人物が居た
"妻"の静珠だ
ずっと伏せ続けてきたが八咫烏は静珠の夫であり、すずは二人の子供であった
自分の子供が惚れている相手と再び再会させたいというのは親としては十分な理由となる
それに八咫烏は少々静珠を待たせ過ぎた
これからは静珠と仲良く夫婦として幽世で過ごすことにした
そして現世は娘達に任せることにした
一方すずは双七無しでも普通に生活を営んでいた
ちゃんと学校に行き、おっちゃんに借りた資金を返すためにバイトまでしていた
以前のすずとは大違いできちんと社会に溶け込んでいた、もう立派に自立していた
双七がいなくても生活には何も困らなかった
いつものように帰宅したすずそこに見知らぬ男物の靴があることに疑問を抱き、ベッドを見てみるとよく見知った自分の愛した男が呑気に寝ていることに涙が零れそうになった
急いで叩き起こし双七が帰ってきたことに嬉し泣きしながら、双七もまたすずと楽しい日々が過ごせることを願いながら二人は久しぶりに再会を果たした
END
●すずED3最終決戦が終わった後、いつまで経っても双七が戻ってこない
待ちきれなくなったすずは双七がいるであろう人の幽世でもない妖の幽世でもない、強いて言うのならあやかしびとの幽世に向かった
熾天使薬を使用し、あの決戦で双七もあやかしびとになった
行き着いた先は誰もいない幽世
しかし同じあやかしびとのすずならばここに来ることは出来る
一人ならここは死ぬほど退屈で死ぬほど寂しく死ぬほど辛い
だが愛するすずが隣に居てくれるのならどこまでも歩いて行ける気がした
END
●刀子ED1逢難から無事双七を切り離すことに成功した後、逢難の処遇について八咫烏は色々と考えていた
逢難は基本的に人の負の感情を糧に生きる尾
人間に負の感情が無くなることがないように逢難はいつまた復活するとも限らない
そこで八咫烏は逢難を宇宙空間へ放り捨てることにした
どこぞの宇宙へ旅立ってしまえばこれから人類が脅かされることもない
その事を直接八咫烏から聞いた刀子と双七は一安心した
そして刀子と双七は晴れて楽しい楽しいデートを続けるのでした
END
●トーニャ手術を受けた双七は珍しいことにトーニャから電話が掛かって来たことに驚く
素直にありがとうと受け取っておく
数日後、学校に登校した双七は席に座っているトーニャを見てみる
どことなく浮かれている様子
通称"ふわふわモード"とやらに入っているらしい
いつもの毅然とした態度ではなく何を言ってもふわふわとしていて会話に張り合いが全くない
まるで別人にでもなったような変わり様である
普段はトーニャと言い争っているすずもさすがの変わり様に毒気を抜かれてしまった
翌日もトーニャは同じ状態で何かあったに違いないと踏んだ双七は昼休みに何処かに向かうトーニャの後を追って見る
運動場の鉄棒の上にトーニャは座って何やら手紙らしきものを見ていた
手紙を見ているトーニャは本当に幸せそうだ
ここで声を掛けてしまうのは野暮というもの
双七は大人しくその場を後にしようと思い、背を向けて歩き出そうとしたのだが――――
その瞬間に一際強い風が吹いた
2枚の手紙が風に吹かれ、トーニャの手を離れて双七の足元に運ばれてきた
拾い上げてトーニャに返そうするがトーニャが手紙を引ったくるように1枚を取ったと同時にまた強い風が吹き、もう1枚が排水口の溝に落ちてしまった
酷く悲しい表情でそれを取り上げたかと思うと双七をキッと睨みつけ、頬を張り飛ばした
理由はわからないが双七はトーニャの触れてはいけない何かに触れてしまったのだと理解した
生徒会にいつも通りの態度で出席するトーニャ
双七はトーニャに謝ったがあなたのせいではありません、とどこか冷たく許された感じがした
このままでは何となく学校でも生徒会でも居心地悪い
双七はトーニャにしつこく謝り続けるが逆にトーニャはそこまでして双七が謝り続ける訳がわからなかった
双七はただ単にこのギクシャクした感じが何となく嫌でトーニャに嫌われたままではいたくなかった
関係修復は意外と早くやってきた
愁厳に誘われて釣りをすずと3人で釣りをしていた時だ
そこにトーニャと彼の兄を名乗っているウラジミールが現れた
愁厳はウラジミールと話があると言って席を空けてしまった
すずは釣りに夢中になっている
トーニャは手紙の話を切り出した
あの手紙はロシアに住んでいる妹からのものだったらしい
トーニャは双七がトーニャの大切な時間を邪魔したのだと思ってくれていることを理解し、許した
双七達と別れた後、ウラジミールはトーニャに"父さん"から緊急の要件があることを伝える
水面下で計画は進んでいた・・・
翌日、双七が朝起きていつもどおりすずと一緒に学校へ行こうとするとマンションの前にはトーニャが
「如月くん。好きです、付き合ってください」
いきなり身も蓋もない事を言い出すトーニャ
双七は戸惑い、すずは当然の如く怒り狂った
学校では大騒ぎになり嫉妬やら羨ましいやらで針の筵状態だった
だがトーニャがいきなりこんな行動に出たのも全てはウラジミールの企みだった
ウラジミールは本当はトーニャとすずを仲良くさせたかったのだが、すずとトーニャは相性が悪いので双七に目を付けた
双七を落としてしまえば双七に懐いているすずも自ずと言うことを聞くと思ったからだ
トーニャは好きでもない男に演技を続け道化を演じることにした
愁厳はそれとなく双七に注意しろ、と促していたが双七が気付くことはなかった
さらにトーニャは双七達が住んでいるマンションまでお邪魔しにきていた
すずは露骨に嫌そうな顔をするが双七がまぁまぁと言うので仕方なく見過ごした
しかしウラジミールとトーニャに取って事態は良くない方向に動き始める
"防神機関"が動き出したとの報告が入った
ウラジミールは作戦を現時刻を以って中止すると言うがトーニャはもう少しだけ待って欲しいと懇願
如月双七と如月すずを祖国に連れ帰ることが出来なければ妹に会うことは出来ない
そう、トーニャは妹のために全てを捨てていた
翌日、トーニャは具合が悪いと言って学校を休んだ
双七のマンションで
昼休みに抜け出して私に会いに来て欲しいとメッセージを寄越すトーニャ
学校を抜け出すことは気が引けたがトーニャに会いに行く双七
部屋のドアを開けるなりトーニャは双七を招き寄せ、ついには体で双七を篭絡しようとする
時間が無かったトーニャにはこれが一番手っ取り早いと思った
だがちょうどその時、玄関先には一乃谷愁厳がトーニャを敵対視するように佇んでいた
それを見るなりトーニャは全てを諦めたような目で双七にごめんなさい、と伝え部屋を出ていった
さっぱり事情がわからない双七は愁厳から事の成り行きを聞いた
トーニャはロシア連邦のスパイだということ
そして防神機関に目をつけられたということ
防神機関の主な仕事は諜報防止活動
さらにトーニャの目的は如月すずだったということ
あまりのショックに声も出なかった
あれだけ生徒会では淡々と仕事をこなし人付き合いもつつがなくこなしていたトーニャがスパイだったなんて信じられない
だが現に彼女は防神機関に捕まったのだ
それは厳然たる事実だろう
生徒会のみんなを欺いていたことも
それが双七にはショックであり、愁厳にとっても心苦しかった
護送されていたトーニャは途中でウラジミールの介入があり防神機関の手を逃れていた
状況が切迫している中、トーニャは"父親"に指示を乞う
父親も芳しくない情報をトーニャに与えた
ウラジミールがアメリカとの二重スパイだったということ
父親はウラジミールの殺害をトーニャに命じた
はい、と言おうとしたところでウラジミールが現れヘッドホンを奪った
トーニャには未知のやり取りを父親とウラジミールがしている
父親との会話が終わるとトーニャはウラジミールに向けて殺意を放った
自分の側に居た男が自分を裏切っていたことに怒りが沸く
だがウラジミールは必死にトーニャを説得する、お前も裏切られているんだと
しかしトーニャはウラジミールの言葉に耳を貸さず襲いかかる
こいつを殺して如月すずを連れ帰り、私は祖国に帰って妹と暮らすんだ
そんな思いが強かった
ウラジミールはそれでもトーニャに言い聞かせる
妹が生きている保証はない、と
妹が生きているのだとしたら何故写真の一枚も寄越さない、と
そして恐らくもうトーニャの妹、サーシャは死んでいるのでは、と
驚愕するトーニャ
だがそんな嘘には騙さないッ――――
なおも攻撃し続けるトーニャ
ウラジミールは仕方なくトーニャを落ち着かせるために攻勢に出た
トーニャの足場を浮かせてビルの上から落ちる・・・というところでトーニャのキキーモラを引っ張りあげ助けようとするがトーニャは自らそれを振り切り落下していく
妹が生きてない事が分かったのなら、もう自分が生きている価値なんてない
今までの人生、全て妹のために費やしてきた
妹がいないとなればもう心残りなんて――――いやひとつだけあった
演技とは言え、彼に伝えたいことがあった
全てを諦めかけたと思われた全身に力が入った
キキーモラを引っ掛け窓ガラスからビルに突っ込んだ
その拍子に窓枠の破片で脇腹を深く貫いてしまった
よろよろと路地に入り最後に掛けた電話番号は如月双七のものだった
双七はトーニャからの電話が来るなり必死に話しかけた
トーニャは瀕死でもうあまり喋る気力もなかったが最後に伝えたいことがあった
生徒会のみんなで過ごした日々は"本当"に楽しいものであったこと
他の全ては芝居だったとしてもこれだけは絶対に嘘じゃないということ
これが今までピエロを演じ続けていた自分に出来る嘘偽りない真の告白だった
今更そんなこと言われても・・・
生徒会のみんなは憤怒していた、今の今まで騙しておいてよくも抜け抜けと・・・
当然の感情である
だが双七は違っていた
最後にトーニャが言った「楽しかった」という言葉を信じることにした
何としてもトーニャを助け出すと決意していた
あまりにもお人好し過ぎて救いようがないと思われつつも、生徒会の面子は協力してトーニャを探すことにした
幸い、トーニャは電話を切らないで意識を失ったため、音である程度の位置を割り出して発見することが出来た
病院で一命を取り留めたトーニャはどうして助けたのか、と自虐的になっていたそんなトーニャを伊緒は叱咤し、これからのことを考えた
父親の狙いはすず
そのために"チェルノボグ"という部隊を投入してくるようだった
ウラジミールとトーニャはこれから襲ってくる連中のデータを知っている限りみんな伝えた
すずを巡っての戦争がここに幕を切って下ろされる
舞台は神沢学園
父さん(アチェーツ)が精鋭達を連れてすずを強奪するために現れた
各々精一杯に戦うも愁厳が人質として向こうに渡ってしまう
さすがに見捨てるわけにもいかず一向は向こうの言い分どおりグラウンドに全員で向かう
そこで待ち構えていたのはアチェーツと死んでいたと思われていたサーシャだった
だがサーシャは姉のトーニャを見てもこれと言った反応はなくもうアチェーツの言いなりにしかならない従順なペットと化していた
そしてアチェーツは皮肉なことにも愛し合った姉妹との殺し合いというシナリオを用意していたのだ
姉が勝てば晴れて自由の身、妹が勝てば姉はただの踏み台としての実践実験扱い
どちらにせよ残虐な筋書きだった
双七達が手を出そうにもチェルノボグ達が容赦なく機関銃を構えており下手な動きが取れない
かくして姉妹の対決が始まった
キキーモラが二本あるサーシャは圧倒的に有利だった
トーニャがあと一歩で死ぬというところで地面から這い出たウラジミールが庇ってくれた
ウラジミールがサーシャは死んだという偽情報をトーニャに教えたのはこういった最悪の展開での姉妹再会をさせたくなかったからだ
それならばもう死んだということにして妹の死を乗り越えてトーニャには生きていって欲しい
さらにあのトーニャが妹だと思い読んでいた手紙はウラジミールが書いたものだった
一度遊びごころで返信したら、思いの外トーニャが喜んでくれたようでやめることが出来なくなってしまった
全てを伝え終えたウラジミールは安らかに崩れ落ち、絶命した
この時トーニャは赤の他人であったウラジミールを地の繋がっていない兄と認めたのだった
自分の妹だからという甘えがどこかにあった、必死に話しかければ自分を姉だと再認識してくれるのではないか、という期待があった
でもそんなものはもう捨てた、捨てることにした
妹だったモノを殺す決意をした
トーニャはサーシャの知らないキキーモラの真の姿を覚醒させた
そして空から振る雨の如くサーシャを貫いた
サーシャは死ぬ間際、姉の事を思い出しトーニャはそれに感涙してサーシャを看取った
サーシャがいなくなったアチェーツ達はもはやなんの戦力も持たなかった
意識を取り戻した愁厳と共にあっさりとチェルノボグを制圧し、アチェーツにすずの言霊を憑かせ、一生恐怖に怯え続けるように仕向けた
一息着いたと思われたが一難去ってまた一難
今度はドミニオンが如月すずを狙って神沢学園に集結したのだ
今の戦力的には到底勝利はありえない
そこで現れたのは愛野狩人
不死身の体で双七達の逃走を手伝ってくれた
ウラジミールが残してくれたメッセージに廃港に行けとの通知があった
そこへ向けて一路駆け抜ける
廃港に着きトーニャが脱出経路を確保したところでドミニオンに追い付かれてしまう
目の前には最凶の敵、九鬼耀鋼
逃げる術はなく戦うしかない
トーニャとすずは先にボートに搭乗して双七の戦いを見守っていた
幸い九鬼は今、積年の恨みだった氷鷹一奈を葬った後なので妖の血は鳴りを潜めていた
望んだ状況ではなかったが師弟対決が開始された
すずが双七に"生きる希望"を与えてくれたなのならば
この九鬼耀鋼は双七に"生きる力"を与えてくれた人
その師匠を双七は師匠が教えてくれた九鬼琉にて倒した
九鬼はすぐに起き上がったものの負けを認め、双七を行かせることにした
光念兄弟は納得いかなそうだったが九鬼が行かせてやれと言うと大人しく従った
ウラジミールが残してくれた手紙に正真正銘サーシャの手紙があった
研究所に大量に保管されていたそうだ
残念なことに一通しか手に入れられなかったそうだが手紙にはトーニャを心底愛しているサーシャの想いが綴られていた
海外に逃亡することになった双七、すず、トーニャはあの後、潜水艦でロシアの研究所に向かった
サーシャやトーニャ、その他大勢の人工人妖の実験をしている研究所を襲撃した
これ以上自分達みたいな不幸な子を出さないためにも
これで最後になるように奮戦するのであった
END
●薫 双七は七海病院で夢を見る
自分がまだ織咲病院の施設に入った幼い頃の記憶
親とも離れ離れになった双七には一人の支えてくれる女性がいた
名を飯塚薫
自分よりかなり年上の女性で実際この人が母親代わりだと言ってもいいくらい優しいお姉さんだった
だが薫はしばらくして去った
この記憶は思い出してはいけない記憶、封印せねばなるまい――――
その頃、第参種人妖追跡機関(ドミニオン)の第17戦闘隊に属し、隊長の座に就いている飯塚薫は先日織咲病院から脱走した如月双七こと武部涼一の行方を副隊長の九鬼耀鋼と一緒に探っていた
ドミニオンの第17戦闘隊の最優先任務は脱走した少女(すず)の捕獲だった
決して殺さず生け捕ること、それが長官である雲野修介からの命令だった
そしてついに神沢市に逃亡したというのを突き止める
だがこのとき、ドミニオン内部にも不穏な動きがあった
比良賀の情報によると同じ戦闘隊の部下である氷鷹零奈、氷鷹一奈、光念一兵衛、光念輝義が"百鬼夜行"計画なるものを進めていると
さらにその首謀者は自分たちの上官である雲野修介であると言う
どうもきな臭いと睨んだ薫は彼らの動向も注意深く観察することにした
そんな矢先、いきなり首謀者の一人だった氷鷹一奈の死亡が確認されてしまう
現場に辿り着いた薫は驚愕した
無惨な死に方というよりは跡形もなく消え去っていた
辺りには血の海
しかし死体がない
意味不明な死に方をしていた、そうまるで何かに喰われたような――――
遅れて九鬼もやってきた
現場を見るなり九鬼は恐ろしほど凶悪なオーラを醸し出したがそれも一瞬で霧消した
一方、双七は強くなるための修行をしつつ、おっちゃんに借りた500万円返済のために少しでもお金を稼ごうと七海病院で清掃のアルバイトをしていた
そんな折、自分が見知ったどころではなく親も同然だったあの人がストレッチャーに乗せて運ばれてきた
飯塚薫だった
飯塚薫を大怪我に追いやったのは同じドミニオンの氷鷹零奈達だった
薫は完全に裏切り者扱いされていた
比良賀と命からがらの目に遭いながら逃げ延びたものの薫は重症で意識不明だった
双七は病院に運ばれてきた薫を見るなり懐かしさとともに昔の思い出が段々と蘇ってきた
どうしてこの人は自分の側から離れていったのか
それは自分を"裏切った"からなのだと、思い出してしまった
頭の奥底にずっとしまっておきたかった忌まわしい記憶、そんな記憶が久方ぶりに目の前にした、たとえ変わり果ててしまったとしても飯塚薫なのだと理解した途端に溢れ出してきた
双七は寝る間も惜しんで薫の側に居続けた
すずがずっと病院にいる双七を心配して直接七海病院にやってきた
ベッドに寝ている人物を見て驚愕した
憎きあの女だった
殺したいほど憎かった、親しかった双七を急に裏切ったがの許せなかった
双七が薫に背後から銃で撃たれるシーンをすずは間近で目撃してしまったのだ
双七は優しすぎるから薫を許すだろうけどすずはそうはいかない
双七がやらないのなら自分が変わって薫に仕返しをしてやろうと思いついた
すずは双七がいない間に薫の病室に忍び込み、言霊を使って一種の呪いを掛けた
薫は傷はもうだいぶ癒えているのに足一つ動かせない金縛りの状態になってしまった
もちろんこれはすずにしか解けない戒めである
薫は必死にリハビリをし続けるがすずの言霊の前に意味はなかった
すずは苦しげな薫を見て心底愉悦に浸っていた
双七は薫を見舞いに行くたびに懐かしさとはまた何か違う、いわゆる好意を感じ始めていた
昔は親のような印象しか受けなかったが時間を経て改めて再会してみると昔とは別の印象を抱くようになった
それが好きであるという気持ちに変わっていく度にすずはやるせない気持ちになっていった
裏切り者を好きになるなど全くもって理解出来ない
双七と薫が情事にまで及んでしまったと知った時、ついにすずは堪忍袋の緒が切れた
病室に忍び込み、薫に対してさらに酷い仕打ちを加えようとした矢先ついに双七と出くわしてしまった
双七にだけはこんな汚くて醜い感情を剥き出しにしている姿を見られたくなかった
すずは逃げ出した
屋上で沈み込むすずを見つけた双七は優しくすずを諭し、すずが知らない自分と薫の過去を全て打ち明けた
それを聞くなり、すずは自分の早とちりであったことに気付き深く反省した
薫が双七を裏切るのにもそれなりの理由があった
それを知らずにすずはあのシーンだけを見て勘違いしてしまった
朝方病院からマンション戻ろうとするとマンションの前に見知った顔が居た
九鬼だった
だが九鬼は異様な雰囲気をしておりもはや人間の姿をしている化物だった
ただならぬ雰囲気を感じ取った鴉はすぐさますずと双七を逃し、九鬼を足止めすることにした
薫不在となった17戦闘隊の隊長は九鬼となり予定通りすず捕獲の任務は継続していた
すずと双七は虎太郎と八咫烏に連絡を入れつつ逃げまわる
しかし一台の車がやけにこちらを注意深く伺っていた
そして自分たちの目の前を走っているのが如月双七と如月すずと理解するなり追いかけてきた
氷鷹零奈と光念兄弟だった
間一髪というところで虎太郎が間に合い一瞬で光念兄弟達を拳で殴り倒し、零奈に至ってはクサい口説き文句で堕としてしまう
零奈はすっかり虎太郎の魅力に取り憑かれてしまって、以後仲間に加わることになる
だが鴉を葬り去った九鬼がやってきて虎太郎も奮戦するが一息に意識を失ってしまう
残された双七はすずを庇い囮になる
九鬼はすずの代わりに双七を人質として取ることにした
ドミニオンの本部にまで如月すずを連れてくることが条件だった
安々とすずを渡すわけにはいかないので本部には零奈と虎太郎、そして薫が向かうことに
すずは双七を助けて欲しいと真摯な瞳で懇願し、薫に憑いた言霊を取り払った
ドミニオン本部に侵入するなり待っていましたと言わんばかりに銃撃が襲ってきた
機関員達を倒しながら双七を発見して合流する
一方、虎太郎は屋上にて九鬼とのリベンジ
双七はそれを見届ける義務があるため、屋上へ向かう
残された薫と零奈はやってきた光念兄弟と戦闘に
薫は輝義と死闘を繰り広げた後、勝利をした
零奈は一兵衛とどちらが勝つか賭けをした
薫が勝てば潔く去り、輝義が勝てば零奈を斬り捨てるというものだ
掛けは零奈が勝ったので一兵衛は去った
そして頂上決戦
双七の目の前では九鬼と虎太郎が激闘を繰り広げていた
一進一退の攻防、疾すぎてどうなってるのかすらも目が追いつかないほどだ
最終的には虎太郎が満身創痍で九鬼の心の臓を止めた
勝利の余韻に浸っていると背後で蠢くモノが
完全に死亡したと思われていた九鬼――――いやもう九鬼とは呼べない異形に成り果てた"鬼"がこちらを見定めてニヤリと笑っていた
虎太郎はもう先ほどの戦闘で力がほとんど残っていた
こうなれば残りは双七がやるしかなかった
これほど巨大になってしまった九鬼を倒すにはもう方法はひとつしか無い
ビルの屋上から落とす
周りの金属を集めて九鬼に纏わり付かせ目一杯の力を導入して九鬼を落とす事に成功
双七も一緒に落ちそうになったが虎太郎が引き上げてなんとか生き長らえた
平穏な日常を手に入れた双七は留年してしまったが無事に卒業を果たし、薫は密かに憧れていた教師になって半年ほど双七を教えることが出来た
そして双七は今までお世話になった学校にもお礼を行って新しい日々に向けて旅立つのであった
END
●すずED1九尾の鬼相手に熾天使薬を使用しない道を選んだ双七
熾天使薬無しで勝てるとは到底思えない
それは九尾の鬼もそう思っていたようで人妖の双七が勝てる確率は0に等しかった
だが双七は人妖であり続けようと思ったのだ
一か八か双七は九尾の鬼の眼帯がしてあった右目をかつて九鬼が愛用していたカンフュールの傘の戦端で貫いた
妖になってまでわざわざ眼帯をしている必要はない
もしそれでもしなければならないのだとしたら・・・そこは弱点かはたまた自分自身の業が宿っている場所か
双七の感は当たっていた
九尾の鬼に成り果てた九鬼は死ぬ間際になって徐々に本来の人間の姿を取り戻した
それこそ師弟関係だったあの頃のように
双七は自分が師匠を殺してしまったことに号泣し泣き叫んだがそうしたとて何も変わらない
泣き崩れている双七の元にすずが励ましの電話をしくてれる
すずに元気付けられた双七は九鬼耀鋼のことを生涯、胸に刻んで生きていこうと決心した
月日が経ち、無事に借金の500万を貯めた双七とすずはお世話になったおっちゃんの元を訪れていた
おっちゃんのあの時の記憶はすずの言霊によって綺麗さっぱり無かったことにされている
おっちゃんはその空白の時間に何かあったことは分かるのだが明確には思い出せない
だが目の前の少女と少年はあの時の泥棒は自分達だったと名乗り、借りた500万円を返した
おっちゃんはその記憶が無いにも関わらず、無性に鍋料理が食いたいと言ってきた
その言葉に微か、ほんの微かだが門出の祝いにおっちゃんが鍋料理で持て成してくれたことを思い出してくれたのかもしれないと思うと涙が溢れ、双七とすずはおっちゃんと一緒に鍋料理の材料を買いに行くのだった
END
●刀子ED3 逢難を受け入れずに斬ることを選択した双七
それと同時に八咫烏の部下の烏天狗達が一斉に逢難を貫いていた
愁厳の魂はそれで消滅し、刀子は逢難と一緒に一乃谷神社の拝殿に封印されることになった
外界での時間が過ぎて行く中、封印された刀子の時間は永遠に止まっていた
もう70年も経ったというのに刀子の容姿はあの頃と全く変わってなかった
双七は幾度と無く拝殿に足を運んだ
だがそれも今日で最後みたいだ
いくら頑強な人間でも老いには勝てない
一人妖だった双七もついに寿命が訪れた
死ぬ間際、双七は最後に封印された刀子に触れることが出来た
しわくちゃになった手でも刀子はちゃんと握ってくれた
そして双七の魂は天に登っていく
双七はいつか刀子が自分の元に来るのをひたすら空の上で待ち続けることにした
END
■各シナリオ別感想◆刀子ED2 すずED2と僅差でこちらの方が上かな
刀子ルートは逢難に取り憑かれた双七が妖になってからがめっちゃカッコいいw
刀子ルートは3番目にクリアしたんだけど「双七主人公の癖にあんまり活躍しねーなぁ」と思ってたら逢難受け入れから一気にダークサイドに堕ちていくという・・・w
この展開はちょっと予想外だっただけに嬉しかった
魔刃・焔螺子とか厨二過ぎて最高だったw
テイルズのジューダスか何か?って感じだった
この立ち絵がイケメン過ぎて濡れる
普段の双七さんにこんなカッコよさないのに・・・
あと刀子ルートのED分岐が中出しするか外出しするかで変わったのにワロタwww
エロシーンの選択肢で分岐するなんて普通気づかねぇよw
◆すずED2すずルートは最後に解放されるだけあって長め
さらに一番バトルが熱いルートでもある
とにかく激しいバトルや戦闘なら間違い無くこのルート
終盤はほとんどバトル通しで無茶苦茶熱かった
特に最後の九尾の鬼(九鬼)VS妖(双七)の演出は最高だった
あれは鳥肌立つわww
2005年のゲームなのによくここまでしてくれたと思う
これが一応グッドエンドなのかな?
◆すずED3 すずの選択肢で分岐
まぁこっちはいわゆるノーマルエンド的な終わり方だと思う
最終的には双七とすずが幽世で一緒に過ごせるので悪くはないけど、他の親しかった人達を全部現世においてきてしまうから一長一短
◆刀子ED1 Hシーンで外出しするとこっちに
内容はほんの少ししか変わらないけど向こうで語られてないことや逢難との魂振り時の精神世界での戦闘がちょっと違う
あとこちらのルートじゃないと逢難の処遇がどうなったかわからない
両方やると話が上手くまとまる
九鬼先生が唯一このルートでは力を貸してくれる
他のルートでは全部敵だからなぁ
◆トーニャ トーニャとウラジミールはすずを連れ去り、双七もロシアに向かって旅立ってそれから奪還して帰ってくる・・・
というのが俺が予想していた展開だったんだけど、まさか向こうからやってくるとは思わなかった
予想していたのとは逆の展開になったw
このルートでは狩人が思いもよらぬところで活躍したので笑ったw
つかドミニオン相手に無力とは言え抵抗し続けるのがすげぇ
◆薫 薫さんのルートは虎太郎見るためだけにあるルートだな、うん(酷い)
ラストの九鬼先生とのバトルはかなり熱かった
てか本当に「このおっさん何でこんなにカッコイイんだよ・・・」ってくらい惚れるwww
超強いしね
◆すずED1一番呆気無い終わり方w
ちょっと九鬼先生弱すぎんよ~
九尾の鬼状態なのに眼帯突っついただけで終わるってw
双七も妖にならずに済んだしある意味一番ハッピーエンドなのかこれ
でもこのEDだと八咫烏は静珠とは会えないんだよなぁ・・・
◆刀子ED3 あやかしびとというゲームの中でたぶんこのルートがバッドエンドに当たるんだと思う
完全なバッドではないと思うけど寂しい終わり方なのは間違いない
ルート的には他の2つに比べてかなり短い
選択肢選んでちょっとしたらすぐ終わっちゃう
■キャラ 一乃谷刀子 >飯塚薫 ≧トーニャ・アントーノヴナ・ニキーチナ >氷鷹零奈 >静珠 >氷鷹一奈 >如月すず >姉川さくら >新井美羽 >七海伊緒 ★一乃谷刀子刀使いという時点で俺の中では点数高いのにおまけに声優が一色ヒカルなので演技力も完璧
あやかしびとの中ではダントツです
人気投票でも一位のキャラだったから人気あるんだろうw
刀子さんは冷静沈着なところも素晴らしいのだけど、何よりテンパッて慌ててるところが最高に可愛いw
斬妖刀“文壱”という大刀を使いこなす
ちなみに剣の素質は愁厳より刀子の方がある
立ち絵からして既に好きなんだよなぁ・・・(恍惚)
すずルートでのVS一兵衛戦で見せた“蛇絡”のCGは実にカッコ良かった
★飯塚薫 双七とは結構年が離れているお姉さん
昔は優しくて誰からも慕われていたけど、俺はドミニオンに入ってからの凛々しい薫さんのほうが好き
浅川悠の演技はこういうキャラにはぴったりハマるね
零奈にセクロスの内容聞かれててわろた
おろおろする薫さん可愛い
助手席から身を乗り出して妖鳥(ハルピュイア)を撃つ薫さんのCGがこのゲームで一番好き
このCGは本当カッコイイし、綺麗
★トーニャ・アントーノヴナ・ニキーチナ
どうしてロシアのキャラはこんなフルネームが長いキャラばっかりなんだwww
ちなみにこれでもまだ短く省略したほうで正式な名前はアントニーナ・アントーノヴナ・ニキーチナ
頭が混乱してきます
物怖じしない性格で的確な判断を下せる生徒会には必須な存在
しかしイタズラ好きなこともあり、しょっちゅう他人をイジっている
またすずと犬猿の仲なのでこの二人の火花が飛び散る罵倒のし合いは面白いw
このトーニャが可愛くて、すずの顔で笑えるw
この絵が大好きですねー
サーシャ戦で見せたイースクラ・リーヴィエニは厨二臭がプンプンして最高でした(^p^)
このCG見た瞬間、東方の古明地さとりにしか見えんかったwwwwww パッと見結構似てると思うんだけどw
★氷鷹零奈 ドミニオンの所属のキャラなので出番が少な目なのが残念だけどエロくて好きw
野神奈々のボイスマジやばいw
これは絶対ちんこ起つwwwww
普段の喋り方でもどことなく妖艶さが漂っているのに、エロシーンは絡みつくような声で演技してるもんで本当に勃起します
★静珠 すずの母親
超出番少ないけど立ち絵が美しい
全く
すずとは大違いだぜ ★氷鷹一奈 姉妹揃って野神奈々が演じてる
似た声で演技してるのですぐわかるけど、一奈も一奈でかなりエロい
とりあえず最初のエロシーンで興奮しない男はいないと断言したいw
★如月すず 本作のメイン中のメインヒロイン
でもあんまり好きじゃないんだよなぁw
鮎川ひなたの演技力は十分過ぎるほど上手かったけど
純血の妖怪なので人間に化けたり狐の姿に戻ったりと可能
しかし人間状態の時に嬉しいことがあったり感情が高ぶったりすると狐耳と尻尾が生えてしまう
言霊を使える上、九尾の狐の末裔なのであちこちから狙われる
本作の最重要人物と言っても過言ではない
★姉川さくら生徒会の一員
おっぱい超でかい
サブキャラだけに存在が薄くなりがちなのが残念だけどHシーンはちゃんと用意されてるw
★新井美羽 コミュ障www
ぬいぐるみを顔付近に持ち上げて腹話術みたいにしないと親しくない人とは喋るのが苦手
でも物語後半では結構饒舌になってたりw
★七海伊緒 ワーストは七海伊緒ちゃん
眼鏡キャラはよっぽど他に良いものが揃ってないと好きになれないという俺の法則が発動した(知らんがな)
複数の思考を同時に持つことが出来るのでとんでもない計算処理能力を誇る
サポートは彼女におまかせ
■BGM OP
VIDEO OP full
VIDEO ED
VIDEO OPもEDも男性ヴォーカルのエロゲは初めてなので意外だった
OPはそれほどでもないけどEDはかなり好き
BGM
VIDEO あと2~3個好きなのあるけどこれしかなかった
■総合 ※どう見てもメインヒロインよりサブキャラの男共の方がカッコいいゲームです(重要)もうこれ男だけでいいんじゃね?とか思えるほど暑苦しいw
まぁヒロイン達もそれなりにバトルはしてるんだけども、それに増して愁厳や九鬼先生やドミニオンの一兵衛とか輝義のほうが色々と情熱的なものがありまして・・・w
バトル面においては何も不満はない、本当に熱い
さらにバトルゲーに必要な演出もしっかりと作り込まれていてGood
11eyesの演出も相当好きなんだけどあやかしびとはあやかしびとで良い演出の仕方してる
バトル以外の日常的なシーンは多少ダレるところがあるけどそこまでではない
全体的に高水準です
妖怪をテーマにしたシナリオも新鮮で出てくる妖怪をわざわざググって調べたほど興味深かったw
それと絵が本当に良かったなぁ
あやかしびとを好きになった理由の1つに絵の良さがあるね
今流行りの萌え絵じゃないところがいい(まぁ2005年だから当然っちゃ当然なのかもしれないけどw)
中央東口って人か・・・覚えておこう
元ニトロプラスの人だったのかw
何気にPS2に移植されてるのねw
なんか向こうは追加要素ありっぽい
"学園青春恋愛伝奇バトル" を楽しみたい人におすすめです↑
これが公式ジャンルねw
7月の頭から始めたというのにFPSとか他ゲーに浮気ばかりしていたせいでクリアするのに2ヶ月近く掛かったでござるwww サボり過ぎた
ちなみに刀子さんが好きな人に朗報
同じwill系列のゲーム『輝光翼戦記 銀の刻のコロナ』にてゲストキャラ参戦している一乃谷刀子が使えるというw
刀子さんが好きな人は是非やろう!
原作の技もバッチリ再現してます
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